第一章 〜囚われの少女〜
光
[2]次話
「お姫様。俺はお前を……さらいに来た――」
少女は夜の朝日と出会った。光が閉ざされたこの部屋で。
お姫様と呼ばれたのは、薄い桃色の髪をした少女。恐ろしい程に長いその髪は、強風に煽られ宙を踊る。
少女は朝というものを知らない。この部屋の暗闇が、生きる世界の全てだった。夜が常の世界。それは少女にとって、夜に太陽の光が差し込んでくるような出来事だったのだ。
光というものは皆無だった。ここは、分厚く、固い石壁に閉ざされた部屋。しかし突然現れた人物は、それを壊した。目の前に現れた人物のその姿は、少女の目にはおぼろげな影しか見えない。逆光と、立ち込める煙がそうさせるのだろうか。それとも、長い間暗闇に閉じ込められ、少女は視力に異常をきたしてしまったのだろうか。
少女は心から打ち震えていた。心の底からわいてくるのは、得体の知らない、何の底も知れない恐怖だった。突然の出来事に言葉を失い、言葉という概念さえ脳裏から、この場から逃げ去った。
腰を抜かしたまま、少女はただ目を見開く。 爆発音に驚いたといえば当然だろう。驚くなというのは無理がある。そもそも何が起こったのか、少女には皆目見当がつかなかった。しかしその赤の瞳は、眩い光を携える宝石のようだった。それは、これから起こる出来事に対する希望だろうか。
分厚かった壁は突如として吹き飛び、突然現れた男が少女の世界を変えた。男は一体、どのようにこの壁を爆破したのか。それは少女には、全く知る由もなかった。
男は少女に手を差し伸べる。
「俺たちの信条は、個人の自由を優先する事だ。俺たちは、決してお前を拘束しない。この手を取るかどうかはお前が決めていい」
少女へ意志を問う。
「自由を受け入れるか? それとも――」
その問いに対する答えは、次の言葉を聞くまでもなく決まっていた。
運命の出逢いというのはこういう物を指すのだろうか。しかし、それを決めるのは、物語の結末次第。
〜この物語の、時代や世界観のモデルは19世紀ヨーロッパのような、そんな洋風なイメージ。
作者によって創られる、ファンタジーの世界へどうぞ〜
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