第百四十四話 久政の顔その十四
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「住む城は好きにせよ」
「では小谷城を出ても」
「いてもよい」
そこは完全に任せるというのだ、長政に。
「そして家の色もじゃ」
「紺のままでいいですか」
「その代わり織田家に入ってもらうがな」
盟友ではなく家臣になってもらうというのだ、これからは。
「頼むぞ」
「畏まりました」
「さて、それではじゃ」
信長はあらためて一同に告げた、そうしてだった。
酒に馳走がさらに運ばれそのうえで宴が再開された、皆飲める者はしこたま飲んだ。それを祝いとしたのである。
その祝いの後信長は岐阜に戻る、そのうえで。
長政を正式に近江の北の主とした、そして南は。
森を呼びだ、こう彼に告げた。
「御主に十万語句を与える」
「そして、ですな」
「うむ、近江の南のな」
そこのだというのだ。
「比叡山の方を頼みたい」
「比叡山ですか」
「どうも近頃あの寺にもよからぬ噂がある」
「確かに、そういえば」
森も信長のその言葉に頷いて述べた。
「公方様も文を送られているとか」
「少し厄介じゃ」
だからだというのだ。
「公方様の牽制の意味でもな」
「それがしがあの場所に入りですな」
「頼むぞ、猿夜叉も戻ればな」
「近江は万全ですな」
「あ奴はもう頭を剃った」
あくまで一時だがだ、その間は出家しているのでおおっぴらには動けない。実質的には謹慎なのだ。
それでだ、彼が動けない間はというのだ。
「髪が戻るまでは一人で頼む」
「さすれば」
「今権六も五郎左も近江にはやれぬ」
それぞれの領地で政を行っているからだ、織田家も主だった家臣達は全員それぞれの領地で政にあたっている、森もそうだが彼は信長があえて転封させたのだ。
「だからじゃ」
「それがしに」
「他におらぬ」
まさに森しか、というのだ。
「だから頼むぞ」
「比叡山、僧兵ですか」
「うむ、後はな」
「杉谷達ですか」
「あの者達も比叡山だという」
これは長政達に聞いたことだ。
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