第百四十四話 久政の顔その十三
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「こういった術は知りませぬ」
「左様ですか」
「この髑髏の者はおそらく相当な怨みを抱かさせられて死んだのでしょう」
雪斎はこのことはわかった、やはり高僧と呼ばれるだけはある。
だが、だ。それでもこの髑髏が何かはわからないままで長政に答えるばかりだった。
「しかしこれだけの怨みを抱かせて死なせるやり方は」
「左道でもありませぬか」
「そうはありませぬ」
怨みを操る左道でもだというのだ。
「ここまでのものは」
「そうでありますか」
「そしてこの髑髏を使えば」
左道の者がそうすればというのだ。
「必ずや恐ろしいことになりましょう」
「だから父上も」
「そうかと。してこの髑髏ですが」
雪斎は髑髏をおぞましいものを見る顔で見ながら今度は信長に言った。
「殿、封じましょう」
「祓わぬか」
「祓うにはあまりにも怨念が強過ぎます」
だからだというのだ。
「この髑髏は拙僧の手に余ります」
「ふむ、御主でもか」
「今天下でこの髑髏をどうにか出来るとなれば」
「誰か知っておるか」
「果心居士殿でしょうか」
ここでこの者の名を出した雪斎だった。
「あの方位しか思い浮かびませぬ」
「果心居士か、そういえば」
その名を聞いてだ、信長は彼等を思い出した。
「飛騨者達を集め育てておったな」
「そうでしたな、そういえば」
その話を聞いてだ、滝川も応える。
「あの方は」
「そうだったのう。ではじゃ」
「飛騨者達に今何処にいるか聞きますか」
「うむ、そうするとしよう」
そしてこの髑髏をどうにかするというのだ。
「この髑髏についてはな」
「わかりました、それでは」
「わしも何となくだがわかる」
信長はそうした術については知らない、だがその直感で察したのだ。それで彼も怪訝な顔になって言うのだった。
「この髑髏、実におぞましいものじゃ」
「ですな、黄金の色がここまで禍々しく見えるとは」
信長の横にいる家康も言う。
「思いも寄りませんでした」
「もうよい」
信長はここで周りにこう言った。
「髑髏は下げよ」
「はい、それでは」
「その様に」
こうして髑髏は下げられた、だが。
長政も他の者も沈痛な面持ちだった、それで信長は長政にこう言った。
「よい、すぐに忘れよという方が無理じゃな」
「それは」
「わしもあの様なものをここで見せて済まぬと思っておる」
詫びの言葉も述べる。
「しかしやはり見たこともなかったか」
「誰が使ったかは察しがつきますが」
長政もそれはわかっていた、おおよそであるが。
「それでもあれは」
「わしも見たことがなかったからのう」
「並大抵のものではありませぬな」
「そうじゃな、ではじゃ」
「それではといいますと」
「猿夜叉、御主
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