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緋弾のアリア-諧調の担い手-
水晶に映る少女 両親の想い
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そして繰り返し見続けている、この夢を。

そして最後に、俺は彼女の言葉を耳にした。





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凍夜side
《出雲大社》
PM:21時14分


夜も更けた、常闇に染まった時間帯。閑散とした、閉界とした世界。

だが、それでも都市部の煌びやかなネオンの様に、人工的な光の無い世界は輝いていた。

頭上に広がる夜空を見据える。
そこには、現代の日本では見れない程に輝く星界の海。魔性とも言える、大きな月が広がっていた。

それは現在と言う時間より切り取られた、一つの世界として独立している“出雲”という世界の特権だろう。

出雲に存在する古い作りの日本屋敷、その自室の縁側。そこに俺と妻の姿があった。

久しぶりの二人っきり。
肩を寄せ合って座っているものの、今はそう言うムードのある場ではない。

それ所か、重い空気が夜風に乗って流れている。
風の靡く音、虫の鳴き声すら聞こえずに、何処か嵐の前の静けさを連想させる。

今此処でこうしているのは今日ナルカナが語った事、時夜についての話をする為だ。


「……そうですか、永遠神剣が時夜に」


俺の話を聞き、時深はそう小さく頷いた。


「…ああ、僅かにではあるが時夜に干渉を及ぼしているそうだ。」


その干渉がどう言ったレベルのものかは、俺には推し量る事は出来ない。

ナルカナ―――“叢雲”と同等の強大な力を持つ永遠神剣が何故、時夜に干渉を及ぼしているのか、その思惑は解らない。


「…………」


そう告げると、下を向いて押し黙る時深。その表情は覗き見る事は出来ない。

きっと最悪な結末を思い描き、その想像に身を震わせているのだろう。

俺はそんな彼女の身を、大丈夫だと告げる様に優しく抱き締める。


「時深、お前の瞳で“視る”事は出来ないのか?」


時深は“時見の目”と呼ばれる、限定的ながらも未来を見通す瞳を持っている。

その力でならば何かが解ると踏んだのだが、時深はやんわりと首を横に振る。


「…いえ、私の力を持ってしても、時夜の未来は見えないのです。…まるで霧がかった様に、曖昧であやふやなんです、その理由は定かではありませんが」


時深の力を持ってしても時夜の未来は見えない。
その上位永遠神剣が何かしらの力で、瞳の力を霧散させている可能性が高いと思うのが妥当か。

だが何故時夜に目を付けたのか、その理由は深く考えても解らない。疑問は尽きない。


「……私、時夜の未来が見えないと知った時、不安と同時に喜びを感じました。私にとって初めてだったんです。未来が見えないという事は」


時深は唐突に口を開き、独白の様に語り始める
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