番外編
再開のダイシー・カフェ
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その一言に驚異的な勢いで反応したこの二人も、只者ではない。
まあ、俺の知るこの二人なら、それくらいは出来るだろうが。
(あーあ、また帰りが遅くなるな……)
俺はこれから始まるであろう途方も無く長く面倒な会話に思いを馳せて、深々と溜め息をついた。
◆
シド。
その名前は言うまでもなくリズベットにとって特別な意味を持つ名前だった。それは、キリトやアスナ、エギルといった仲間たちと同じ重みをもち、……更に言えば、彼らよりも暗くのしかかる影を宿したプレイヤー名。
職人クラスであった自分は、本当の意味でのSAOの地獄を知ってはいないのだと、リズベットは自覚している。事実、自分の目の前で同じプレイヤーが、仲間が、恋人が死んでいく姿を直接目にするという機会は、あのデスゲームの中でも無かったのだ。しかしそんなリズベットでさえも、時折あの世界のことを悪夢に見る。あの呪われたゲームは、キリトやアスナといったかけがえのない友人を得させてくれたのと同時に、幾人ものプレイヤーの命を奪っていった。
……彼女の、「親友」の一人も。
一度、『彼女』が夢に出た朝、リズベットはぼろぼろと泣きながら目を覚ました。眠ったまま零れ落ちた涙は枕のカバーをぐっしょりと濡らし、起きてなお止まることのない滴は寝間着の襟元までを湿らせるほどに流れ続けた。
それと同時に、シドのことを思った。
忘れたことなんてなかったが、強く強く思い描いた。
自分と同じ…いや、それ以上に深い悲しみを抱いたであろう、『彼女』の最愛の夫。
その名を最後に聞いたのは、デスゲーム最後の日の精鋭三十二名の討伐隊の名簿…キリトやアスナの話では多数の死者がでたと聞くその決戦に赴いた一人としてだった。
多大な死者が出たと聞くあの決戦を、彼は生き抜けたのか。
それ以前に、彼は『彼女』の死を受け止めることが出来たのか。
(…アイツ…今、どうしてるかな…)
その、確かめようのない不安と辛さを、リズはずっと抱えてきた。
だが今日、この日。
―――ダイシー・カフェに行こう。会わせたい人がいるんだ。
「毎度あり、『シド』」
キリトのお誘いで向かった、もうリズベットにとっても行きつけの店となったダイシー・カフェ。その、いい意味でSAOに戻ったような錯覚をもたらす店内で、懐かしくて、けれどチクリとした痛みを彼女の胸に宿し続けたその名を、彼女は再び耳にした。
◆
『どうしたのかな、御嬢さんがた?』
咄嗟に逃げに走ってしまうのは、SAO時代からずっと変わらない俺の癖だ。知らない輩に声をかけられた際に最も有効な「英語で話しかける」という対応で腕を掴んできた少女を迎撃する。俺の金髪
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