番外編
再開のダイシー・カフェ
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な視線が、俺のサングラス越しの目線と交錯し、
「……っっ!!?」
俺は思わず目を見開いた。
◆
ソードアート・オンライン。
それはあらゆる意味で例外的なゲームであり、ほかの一般的なMMORPGと違う点を挙げようと思えばそれこそキリがない。その数ある特色の中の一つを上げるならそこには、「アバターと実プレイヤーの顔や体格が同じ」というものがあげられるだろう。
それは要するに金やツテでド派手な外見を手に入れることが不可能であり、過半数が日本人という状況の中で身長180オーバーのド金髪なガイジン野郎が目立たないようにするのも難しいということを意味する。ついでに言えば、道を歩けば振り返るような美人さんはゲームの中でも美人さんのままだということだ。
そんでもって。
外見が同じなのであればそれは、「現実世界でばったり会う」ことも、有り得なくはないのだ。
◆
ほんの数秒の硬直のあと、じろりと店主……エギルを見やる。
ダイシー・カフェの店主であり、俺とは比喩ではなく生死を共にしたこともある戦友でもある男、エギル…本名は確か、アンドリュー・ギルバート・ミルズ、だったか。うろ覚えなのは、俺は彼の本名を呼ぶことが無いからだ。そして『エギル』というその親しみ深いその名も、それがかの呪われたタイトルである「ソードアート・オンライン」で少なくないプレイヤーに知られた名前であるために俺は殆ど使わないことにしている。結果俺はエギルをただ「店主」とだけ呼ぶことが多い。そしてそれと似たような理由で(か、どうかは知らないが)エギルも俺の名を呼ぶことは無い。
だが今、エギルは俺を『シド』と呼んだ。これ見よがしに。
なぜ? 聞くまでもなかった。……というか、嫌が応にも思い知らされた。
「…シド、さん?」
「って、あの、シド?」
理由が俺の腕を掴んでやがるから。テーブルの横を通り過ぎようとしていた俺の体が、エギルの呼びかけで止まった。その時を逃がさずにテーブルから伸びた一本の細い腕が、俺の手首をしっかりと握りしめているから。
(おいおい……)
俺が見開いた目を恨みの色に変えると、視線の端でエギルがにやりと笑う。
(こいつ……知ってやがったな……)
今日、この二人が学校帰りにこの店に来ることを。俺がこの二人……正確にはとある男を含む彼女ら周辺の友人関係を避け続けていることを、知らないわけじゃあなかろうに。
(……それにしても、ね……)
咄嗟にこの状況で、店主としても友人としてもおかしくない態度をとりつつ俺の正体を暴露しやがるとは、流石は商売人、言葉の使い方にはそれなりに心得があるのか。そして、
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