第五十八話 大刀その十二
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それでここで中田も言ったのである。
「よくそんなのあったな、そして見つけたな」
「見つけたら相当な発見ですよね」
「それ向こうの学会に発表しなかったんだな」
「あくまであの人だけが知っていることですか」
「それって学ぶ人間としてどうかって思うしな」
こうも思った中田だった。
「けれどあの人そうしたことをする人じゃないよな」
「真面目で誠実な人ですよね」
しかも思いやりがある、聡美は決して悪人ではないのだ。
「実際に」
「ああ、だからな」
「学会のことを知らないのならともかくな」
「あの人発表もしてますよ」
上城は中田にこのことも話した。
「論文とか。それで考古学会でも知られてきてるとか」
「まだ大学生でもだよな」
「はい、そうみたいです」
「なら知ってるな」
中田も話を聞いてすぐに理解した。
「そうしたことも常識として」
「学会ってそうなんですね」
「俺もまだ教わったばかりだけれどな」
大学に入ってからだった。学会というものはこれまた独特の世界でそこにあるものも何かと複雑でルールにないルールが多いのだ。
そしてそのルールにないルールについてだ、中田は顔を曇らせてそのうえで上城に話した。
「うちの学校でもやっぱりな」
「学会とかあるんですか」
「学閥っていうかな」
そうしたものがありそしてだというのだ。
「これだってはっきり書いてはいないんだよ」
「それでもですか」
「ああ、暗黙の了解っていう決まりが多いんだよ」
「ううん、何かお医者さんのドラマを観てると」
「あるだろ、偉い先生が大勢ぞろぞろ引き連れてな」
「はい、ああいうのがなんですね」
「あるんだよな、うちの大学はまだかなりましらしいがな」
それでもあるにはあるというのだ。
「その中には無茶苦茶ややこしいのもあるんだよ」
「それで銀月さんもですか」
「その常識を破ったらな」
その時はだというのだ。
「村八分にされるからな」
「いじめですか」
「あるぜ、それも陰湿なのがな」
中田はザッハトルテを食べながら上城に話す。
「誰からも相手にされないのがな」
「生きにくい世界なんですね、学会って」
「慣れてる奴や向いてる奴もいるけれどな」
それでもだというのだ。
「まあ決まりが多いのは確かだよ」
「だから銀月さんもそのことを守って」
「そういうことだよ、そうしないとまずいからな」
「じゃあ古文書のことも」
「どうなんだろうな。あったらあの人出すよな」
「ですよね、あの人の性格だと」
「それがわからないんだよ」
腕を組んでそのうえでだった、中田は言った。
そのうえでコーヒーを一口飲んでから述べたのである。
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