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万華鏡
第四十六話 ゆるキャラリレーその八

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「気合入れていくわよ」
「あれっ、立ち直った?」
「ひょっとして」
「残念に思う時間があったらね」
 やはりゆるキャラの姿のままで言う、だから表情は見えないが態度で言うのである。顔は見えはしないがだ。
「これからのことを考えるのよ」
「そこがあんたね」
「あんたらしいわね」
「そうでしょ、だからね」
 それでだというのだ、そうして。
 部長は意気揚々と退場した、その後ろに他の部員達が続く。そうして軽音楽部の面々の前に戻って言うのだった。
「負けたわ」
「はい、三位でしたね」
「結果は」
「レースは負けたわ、けれどね」
 それでもだとだ、明るい声で言う部長だった。
「全力でやって怪我をしなかった」
「そのことでよし、ですね」
「満足すべきですね」
「そうよ、勝負は競技には絶対にあるわ」
 このことはこのリレーにおいてもだ、実際に一位はコスプレ研究会が獲っている。
「それでも、正々堂々として全力を尽くしたから」
「しかも目立てましたし」
「それならですよね」
「そう、何ら恥じることはないわ」
 自分達の目的を達した、だからだというのである。
「皆応援有り難うね」
「部長さん達もお疲れ様でした」
「完走されましたね」
「ああ、私はいいからね」
 ここでこう言う部長だった、右手を顔の高さにやってそのうえで前後に二回猫の前足の様に振っての言葉だ。
「副部長達を褒めてね」
「だから何でそこで謙遜するのよ」
「そうよ、自分だけなのよ」
「褒められるの苦手なのよ」
 だからだというのだ。
「そういうのはね」
「全く、変なところでシャイなんだから」
「恥ずかしがりっていうか」
「いいじゃない」
 少しむっとした顔になって返した部長だった、副部長と書記に。
「とにかく皆よくやってくれたわ」
「あんたもね」
「よくやったわ」
「だから私はね」
 まだ恥ずかしそうに言う部長だった、顔は着ぐるみのままだが物腰からそれが出ていてみんなにも見えている。
「そういうことはね」
「いいっていうの?」
「健闘を称えられるとかは」
「いいのよ」
 実際にこう言う部長だった。
「あんた達だけでね」
「そういう訳にはいかないから」
「あんたもいなさい」
 副部長と書記の二人で去ろうとする部長を止める、部長もそれを受けてようやくだった。
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