第一章 平凡な日常
25、お礼とその他となんとやら
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「確かこの辺りだったような……」
僕は今、ある人の家を探していた。
いつだったか、僕を助けてくれた優しい人。
曖昧な記憶だけを頼りに、彼の家を探す。
「あ、あった」
“霜月”とプレートのかかった家。
ピンポーン
『はーい』
インターホンを押すと、中から声が返ってきた。
開いた扉から覗いたのは、エメラルドグリーンの髪。
見覚えがある。
「あ……」
自分を見つめる緑色の瞳。
僕はそこに、なにか冷たく暗いものを感じた。
思わず半歩下がってしまう。
けれどそれは一瞬だった。
「入江! よく来たな。何もないけど、とりあえず上がれ!」
あのときと同じ、優しい笑顔に出迎えられる。
小さく礼をしてから玄関を上がると、リビングと思われる部屋に通された。
て言うか、玄関を入って最初の扉の向こうがリビングだった。
「今お茶出すから、ちょっと待っててくれ」
「あ、はい」
霜月君が、台所へと姿を消す。
目で後を追ってみると、リビングと台所の間にもう一室あった。
あれはダイニングかな?
「ほい、レモンハーブティー」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、霜月君は一瞬ビックリした顔になり、クスクスと笑いだした。
「ど、どうしたんですか……?」
「いや、別に」
そう言いながらも、霜月君はクスクスと笑い続ける。
何がおかしいんだろうと思いながら、レモンハーブティーを一口飲んだ。
「あ、これすごく美味しい」
「だろ? それ、特注品なんだ」
特注品って……霜月君ってお金持ち?
「そーいや、何でウチに来たんだ? ここ、お前が巻き込まれた騒動があった家の隣だぜ?」
「その……お礼を言いに。この前はすぐに帰っちゃったから」
「ははっ、入江って律儀なんだな」
「そっそんな事は……。ただ、本当に感謝してるんです」
「やめろよ。オレは別に、そんなできた人間じゃねぇよ」
「どうして霜月k……むぐっ」
突然、口の中に何かが突っ込まれた。
甘くて柔らかい。
マシュマロだった。
「敬語なんて使うな。オレの方が年下だぜ?」
「そ、そうなんだ」
「要でいいよ」
「えっとじゃあ、要k……むぐっ」
またマシュマロを口に突っ込まれる。
「要」
「……はい」
その後、僕は要と一時間ほど話をした。
そのときに要が女の子だと知ったときの衝撃は、半端じゃなかった。
帰りには、お土産として500g入りのマシュマロをもらった。
「…………こんなに食べられないよ」
あ、そうだ。
彼に分けてあげよう。
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