第十四話 〜彼女たちのお話 -桐生アスナの章-【暁 Ver】
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ならなかったし、食事が終わっても他の人間と馬鹿な話をするなど考えられなかった。
「ふん。まるで飯事だな」
「そうですか?」
男は唐突に横合いから聞こえてきた声に驚きながらも、声の主を確認する。
「スバル・ナカジマか。俺に何か用か」
「勿論、用があるから声を掛けたんですよ。マッハキャリバー? 再生して」
『高町なのはが、撃墜された過去か。俺の権限があれば、この程度の情報を引き出す事など造作もないな』
男──── エイジ・タカムラは今度こそ驚きに身を固めていた。スバルは普段の彼女からは想像もつかない冷淡な口調で、タカムラへと語りかける。
「一人言が多いみたいですね、タカムラさんは。止めた方が良いですよ?」
「貴様、どうやった。あの時には」
「誰もいなかった。ですか?」
スバルはちらりとタカムラの肩を見る。そこにいるのは小さな──── 虫。彼女の命令でタカムラに張り付いている、ハエトリグモ。その背中には超小型の盗聴器を背負っている。
「こんな中途半端な時期に、しかも内部調査室から出向だなんて。調べに来ましたって言ってるようなもんですよ? ティアも言ってましたけど、なんで所属部署を偽装しなかったのか、さっぱりわからないって」
「お前には関係ない」
「そうですね、関係ありません。六課に調べられて困るようなことは無いですから。ですけど……」
そう言いながら、タカムラを見据えたスバルの瞳は──── 少しだけ金色に輝いていた。
「おかえり、どうだった?」
「うん。なのはさんの事は誰にも言わないように釘を刺したから大丈夫だと思う。だけど、どうかな」
それを聞いたティアナは仕方ないとでも言うように肩を竦めた。
「ま、スパイであることには変わりは無いんだし、警戒しておくに越したことはないわね。『伍長』は張り付いたまま?」
「気付いてないみたいだったけど、潰されたりしないかな」
「意味ないわよ。あの娘が呼べば幾らでも来るんだから。……ホント、応用範囲が広すぎるわ」
ティアナは呆れたように笑う。スバルも釣られるようにして笑うと、二人同時に溜息を吐いた。
「何か物足りないね」
「そう、ね」
まるで、ピースの欠けたジグソーパズルを前にしているよう気分だった。彼女が六課に来る前は、それが当たり前の筈だった。だけど、それは。欠けたピースに気付かないふりをして、絵を完成させたと思っていただけなのかも知れない。
その時、窓の外を眺めていたエリオとキャロが何かを見つけると、一目散に食堂の出口へと走り出した。急に走り出した二人を見て、訝しく思っていた彼女達も何か思い至る事があったのか、
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