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Cross Ballade
第1部:学祭前
第5話『迷走』
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も…私は今日は、和食ですし…」
「つべこべ言わないの! あんたの周りにこぼれてるんだから、あんたがひっくり返したんでしょ?」
 意図的にちぎってこぼしたかのような、無数のパン屑の前に突き飛ばされる。
 4人の剣幕に根負けし、言葉は黙ってパン屑を拾い始めた。
 そんな彼女を、その場に居合わせた刹那はじっと見つめ…。


 言葉を無視して、4人は再び学祭の話し合いを始めた。

「手伝おうか?」
 かがんでパン屑を拾う言葉に声がかかる。
 そちらのほうを向くと、刹那がいた。
「いいんですか? …ありがとうございます」
 言葉は頭を下げた。
 刹那は何も言わず、言葉の隣でパン屑を拾い始めた。
「ねえ」
「何ですか?」
「伊藤のことなんだけど…」
 話題にされたくない話。眉をひそめ、言葉は刹那を見つめる。
「私も世界の幼馴染だから、正直、貴方が伊藤にちょっかいをかけるのは嫌」
「ちょっかいなんかじゃありません。寝とったのは西園寺さんのほうでしょう?」
 息巻く言葉に、刹那は直接は答えず、
「でも、伊藤以外に頼れる人間がいるなら、頼ったほうがいいと思う。例えば、先生とか、家族とか」
「頼れる人間…」
「私が言えることはこれくらいだよ」
「…とはいっても、私の両親は共働きだし。 聞いてくれるかどうか…」
 それは本音であった。
 両親は大きな会社の社長と重役だが、共働きで忙しく、とても自分の悩みなんて聞いてやれるひまなどないのだ。
 妹はまだ純真で、男女の愛憎なんかわかりっこない。
 ならば…。
 まだあの人の腹の中は、わからないが…。
「私がアドバイスできるのは、これだけ」
 刹那はそれ以上何もいわず、パン屑と格闘を始めた。


 刹那が去った後、言葉は携帯電話の電話帳を開いてみる。
 そこには、桜ケ丘の秋山澪のアドレスが登録されていた。
 あの人、何で自分に親切にしてくれたんだろう…。
 ともあれ、もう自分だけでは誠に近づけないかもしれない…。
 ………
 言葉は、新規メール作成のボタンを押した。


 誠に近づけなくなってからというもの、唯のやる気は一気にダウンした。
 ひどく朝寝坊をして、1時間目の途中から教室に入る。先生の小言を聞き流して机に座り、あくびと居眠りばかりして授業に臨む。軽音部でも、いつもの、いや、いつもよりひどくのろのろして不機嫌に、ムギの紅茶と菓子を食べる。
「…唯先輩、あの時のやる気はどうしたんですか…」
 ギターをとった梓が、声をかける。
「何の話?」
 机に突っ伏しながら、低―いこえで唯は答えた。
「あれだけやる気満々だったじゃないですか。一生懸命に練習して、ライブに備えるんじゃなかったんですか?」
「もうどーでもいいよ…テキトーにやるから、
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