第1部:学祭前
第5話『迷走』
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図星であった。
「やっぱり! 誠、あの二人のことが!!」
「……それは……」
そんなに、独占したいのだろうか、自分を。
「だから私には、嫌そうな顔をしてるんだ」
「違う! 俺は!……俺は……」
理由は分からないが、焦りと、苛立ちがいつの間にやらグツグツ湧き上っていた。
「私はただ、誠のえっちの相手でしかないというの!?」
「そんなわけない!!」
声をいつの間にやら荒げていた。
そんなに自分が他の人を気にするのが、いやだというのか?
自分だって迷ってるのに?
「わかったよ!! そんなにおまえが俺を独占したいのならっ……!!」
このっ…!
怒りで何も分からなくなっていた。
勢いのままに、世界を押し倒していた。
「ちょ…ちょっと、やめてよ! 嫌!!」
「うるさいっ!!」
バタバタ暴れ出す世界の手足も、やがて緩慢になってゆく。
なんであんなことをしたのか。
言葉や平沢さんに近付けなくなってイライラしていたのは確か。
でも…でもなんで世界に八つ当たりしてしまったのか…。
苛立ちのままに、事を7回ほど済ませ、やっと気が済んだ。
眼に涙をにじませ、ふらりふらりと帰っていく世界の姿が目に浮かんだ。
「伊藤!」
教室に入って最初に、光にどやされた。
「なんで世界に暴力振るうのよ!!」光に肩を掴まれて詰め寄られる。「世界今日、具合が悪いって休んでいるのよ!!」
「それは…悪いと思っているけど…」
言い訳など、できるわけがなかった。
「伊藤、最近笑わなくなったね」
誠の目を見つめ、隣にいた刹那は怒りというより、心配そうな声で言った。
「な、何言ってんだよ清浦、ほら、こうやって笑顔なんて簡単に…」
ごまかすために、誠は口角をあげるが、心に空洞があって上手く上げられない。
「…笑えてない。目も笑ってない」素早く刹那は悟り、「私達が、桂さんや平沢さんを見はるようになってから、だよね」
「だ、だから違う!!」
ごまかしても、刹那は既に多くを読み取ったようだ。
怒り心頭の光の表情。刹那は思案顔になっていた。
「とにかく、学校終わったら、お見舞いに行くから」
二人の顔から眼をそむけ、急いでトイレに向かった。
トイレで一人になってから、錆びつきくすんだタイルに向かって、誠は拳をたたいた。
「くそ! くそ! くそーっ!!」
昼の委員会活動。
学級委員たちが向い合せに座り、弁当を食べながら学祭のテーマについて話し合っている。
どしゃっ!
急に大きな音がしたので、言葉はそちらを向く。
自分のすぐそばで、パン屑が散らばっていた。
「桂さーん、パン屑がこぼれてるんだけどー」
言葉は4人の女子学生に取り囲まれた。
「え? で、で
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