第118話
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子はイタリア語で何かを言っている。
何度も言うが、上条はイタリア語はさっぱりだ。
ぶつかった事を誤っているのだろうと、勝手に考えた上条は身振り手振りで気にするな、と伝える。
それが伝わったのか、最後に何か言って人混みの中を走って行く。
さぁ、気を取り直してインデックスの捜索をしようと考えた時だった。
ふと、後ろポケットに何か違和感を感じた。
上条は恐る恐る手を後ろに回し、ポケットを確認する。
そこにはなかった。
後ろに入れていた筈であろう、財布がどこにもなかった。
上条の顔は一気に真っ青になっていく。
キオッジアに来る前は、財布にはチェーンをかけ、ズボンの内側には予備の財布を用意していた。
しかし、オルソラにそれは自分の事を観光客である事を周囲に教えているようなもの、だと言っていた。
それを今朝思い出した上条は、普段通りの格好に変えたのだが、それが完全に裏目に出た。
チェーンをしていれば、盗まれることはなかった筈だ。
(盗られたとなると、一番の可能性はさっきの子供!
まだ、近くにいる筈だ。)
眼を皿にして、周囲を見渡す。
その時、視界の端でさっきの子供の影らしきものが見えた。
上条は人混みをかき分けながらそこへ向かう。
ちょうど、その影は路地裏に入ろうとしている所だった。
「てめぇ、待ちやがれ!!」
此処の地理は全く分からない上条にとって、路地裏などに逃げられ、見失えばその時点で追い駆ける事は不可能に近くなる。
だからこそ、上条は見失う前に取り押さえようと、全力疾走して追いかける。
「ッ!?」
上条の言葉が聞こえたのか、驚きながらも路地裏に入って行く。
その後を上条は追いかける。
「俺の財布を返しやがれ!」
言葉は通じないだろうが、そう叫ばずにはいられなかった。
子供にしては中々足は速い方であったが、常日頃追いかけっこしている上条の方が速い。
それは子供の方も分かっているのか、すぐ側の横道に入る。
足が駄目なら、入り組んだ道で撒くつもりなのだろう。
しかし、上条はその入り組んだ道で逃げるのにも慣れている。
何より、体力的な差もあり徐々に追い詰めていく。
その時だった。
突然、子供は後ろに振り返ると追いかけてくる上条に向かって走り出す。
「なっ!?」
慌てて足を止めようとする。
子供は勢いを止めようとせず、上条の腹に向かってタックルを入れる。
「ぐふぇ!!」
そのまま後ろに倒れる上条。
子供は慌てて立ち上がり、来た道を逆走する。
咳き込みながらも上条も立ち上がり、追いかけっこが再開される。
強烈な日差しの下、麻生はキオッジアの街を散歩していた。
綺麗な街並みなどを堪能しながら、街を歩
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