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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第77話 風の眷属
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に成らないように後頭部で綺麗に結い上げた少女。この飛竜騎士団を率いるマジャール侯カルマーンの長女のシモーヌ・アリア・ロレーヌ。
 そして、彼女の操る飛竜にはもう一人の同乗者……。貴族に相応しい優雅なドレス姿で戦場に現われた蒼髪、蒼い瞳の女性の姿が存在して居た。

「良く持ちこたえましたね、三人とも」

 見た目は二十代後半から三十代前半。蒼い髪の毛を短く……。貴族の女性にしては非常に珍しい事に、まるでタバサのようなショート・ボブに切り揃える。
 いや、似ているのは髪の長さだけでは有りません。その髪の毛の質もタバサに良く似た柔らかな髪の毛の質。湖の乙女のように多少、癖のある髪の毛の質ではなく、かなり素直な髪質のように感じます。

 おそらく、蒼い髪の毛、蒼い瞳から考えるとタバサや、アリアと同じガリア王家に繋がる血筋。まして、その女性から感じて居るのは人ならざる気配。より具体的に言うのなら、それはタバサと同じ濃い夜の気配。
 外見的な年齢から言うと多少の違和感を覚えますが、夜魔の女王ならば外見的な年齢は無視しても良いはずです。何故ならば、彼女らは血の覚醒を迎えた時から外見的な意味での歳を重ねる、と言う状況は人間よりも緩やかなモノと成りますから。
 ……だとすると、この蒼い髪の毛、蒼い瞳の女性はアリアの母親。マジャール侯爵夫人アデライード。マジャール近辺の言葉で言うのなら、アーデルハイドその人だと言う事ですか。

 ただ、アリアとタバサ。そして、件の女性の三人が並ぶと、十人中八人までは血の繋がりを理解するとは思いますが、より血が濃い繋がりを持つと思うのは間違いなくタバサと件の女性の方。
 外見的な特徴や、顔の造作もそっくり。まして、双方の纏う雰囲気が……。

 そして、俺はこの女性の事を知って居ます。
 いや、実際に出会うのは初めてです。しかし、夢の世界。あの紅い光に包まれたタバサの夢の世界で、無声映画の中に登場した二人の子供たちの母親そっくりの姿形。
 更に、今思い出した事実。あの時。あの夢の世界のタバサが眠って居た屋敷に掲げられた紋章が、今、この飛竜騎士団の掲げる紋章。

 その瞬間。

【お義母さん】

 俺の意識の中に存在して居る少女が小さく呟く。
 お母さんではなく、お義母さん?

 ただ、今はそんな細かな言葉を気にしている暇は有りませんか。

 再び絶対零度の拳を振り下ろして来るイタカ。しかし、今回は今までとは状況が違う。
 マジャール侯爵夫人の唱える呪文と、(タバサ)の唱える口訣が奇妙な韻を作り出し、其処に新しい術式が構築される。
 それは、まるで同じ洞に学んだ仙人同士が共に唱和を行った時のような自然な重なり。
 普通は、西洋系の魔法と東洋系の魔法を初見で滑らかに融合させるのは難しいは
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