暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第77話 風の眷属
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界の歪みを助長するだけの行為で有り、其処から更に悪い流れを作り出される結果と成り、更に危険な。もっと高位の邪神が直接現実世界に顕現するような事件が発生する可能性が高く成るだけです。

 振り下ろされる絶対零度の拳。この攻撃を真面に受けると間違いなく生命活動を停止させられる。更に、身体に掠らせる訳にも行かない。
 何故ならば、それは人間を攫い、そのまま宇宙の彼方。紅く煌めく星の傍に有ると言われる暗黒の液体に満たされた湖に眠る自らの主の前にまで連れ去って仕舞うと言うカギ爪。
 そのカギ爪の持つ神話的な力にどの程度の能力が存在しているのかが判りません。

 まして、風に乗りて歩むものに攫われた人間は、生き延びたとしても、それは人間として生き残った訳ではなく、風の邪神。名状し難きモノの眷属としての生を新たに得たと言う事に成る、と記された書物も存在しますから。

 振り下ろされる拳が巻き起こす暴風。普通の人間ならばそれだけでも簡単に凍りつかせられる冷気。しかし、その冷気を纏った暴風でも俺の前髪とタバサの魔術師の証……、漆黒のマントを僅かにはためかせるだけで有った。
 その瞬間――――

 狂気の画家が、己の美的センスが赴くままにキャンバスに絵の具を塗りたくったような蒼穹に走るひび割れ。
 そして、蜘蛛の巣状に走るひび割れから漏れ出す微かな光。

 これは、もしかすると――

 崩壊は一瞬。蜘蛛の巣状に入った亀裂から漏れ出して来ていた向こう側の光は朝日。例え絶望の淵に有ったとしても必ず上り来る希望の象徴。
 闇と狂気の色に染まった世界が、その亀裂の向こう側から差し込んで来る暁光に溶けて行く。

 そして、
 そして、その完全に砕け散った向こう側から、暁光と共になだれ込んで来る何か。

 それは――

「飛竜の群れ?」

 円錐形の陣形で一点突破の形で異界化していた空間に侵入して来た飛竜の一団が、俺とシャルを包囲していたビヤーキーを蹴散らして行く。
 いや、あれは只の飛竜の群れなどではない。彼らの先頭を行く飛竜が掲げる蒼い盾に龍をあしらった紋章。

 いや、あの紋章は何処かで見た事が有るような……。

【マジャール侯爵麾下の飛竜騎士団】

 俺のおぼろげな記憶が何かの形に成り掛けた瞬間、俺と共に在るタバサが、そう【話】し掛けて来る。精神体と成って居ても尚、普段通りの彼女の落ち着いた口調。

 飛竜を駆る騎士たちの手の中には長槍らしき武器が携えられている。
 但し、空中を飛ぶ竜騎兵が槍を振り回して戦う、などと言うナンセンスな戦いを繰り広げていた訳ではない。

 一列に揃えられた竜騎兵の構える槍の穂先に集まる霊気。いや、この気は俺に取っては普段から慣れ親しんだ物。
 それは、龍気。おそらくあの竜騎兵
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