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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第77話 風の眷属
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凍てついた寂しい夜に響く雷鳴のような音が聞こえる。
 遠き雷に対して、条件反射のように反応。
 タバサを胸に抱いたまま、オルニス族のシャルを生来の能力。重力を操る能力で包み込み、瞬間移動に等しい速度で三十メートルほど離れた位置に移動する俺。

 その瞬間、遙か上空から何かが俺たちが居た場所を過ぎ去った。
 そして、その場所からも刹那の判断で今度はシルフを起動。一瞬の内に有視界内に跳ぶ(瞬間移動を行う)

 その一瞬前まで俺が存在した場所を、再び何かが過ぎ去った。
 暴風にも似たその何かが過ぎ去る毎に、身体全体に走る悪寒。
 いや、その巨大な何か自体が、冷気と狂気を纏って居るのは間違いない。

 一瞬の静寂。その瞬間に、ようやく遙か上空に目を遣る余裕を得た。

 其処には……。

「あたかも怨霊のように現れ、髪や身体の一部は強風の中に居るかのようにうねって居る」

 色々な種類の原色の絵の具を、ぐるぐると大ざっぱにかき混ぜたような蒼穹に浮かぶモヤモヤとした巨大な何か。かなり上空に存在する黒い雲のその最上部。有り得ない事に、今の俺にはその部分が輪郭のはっきりとしない、しかし、巨人の頭頂部に見えていた。
 そして、その頭部の目が有るべき場所に強く輝く星がふたつ。

 そう。灼眼と呼ぶに相応しい強い輝きを放つふたつの瞳。
 邪悪で禍々しい。しかし、思わずその場にひれ伏して仕舞いそうになる神気も同時に存在しているモノ。
 成るほど、確かにアレも一種の神で有るのは間違いない。

 凍えるような輪郭……。
 輝く、燃えるような光を放つ双星……。

「風に乗りて歩むもの!」

 俺の叫び声に重なる遠雷の響き。
 そして吹き付ける凍てつく北の彼方よりの風。

 完全に異界化した世界を完全に覆い尽くす程の冷気。そう、それは精霊の護りを通しても感じられる程の強い冷気。
 腕の中の少女の温もりだけが現実。
 そう。その温かさだけが、この絶望的な事態の中で尚、世界が終っていない事を表現していたのだ。

 例え星が消え、月が隠れようとも、それでも尚、朝が来る。
 夜は明け、やがて朝が訪れると言う事を教えてくれているかのようで有った。

 左右からほぼ同時に接近して来るビヤーキー。その連携攻撃の僅かなタイムラグに上下動を繰り返した後に三度目の転移。
 その瞬間に、上空から絶対零度に等しい拳が繰り出され、一瞬前まで俺たちが居た空間が、すべて氷へと変化させられた。
 この拳は、おそらく現実の物質と同じ物ではない。かなり強い呪力の塊。それが、物質と同じ密度で再現されたモノ。
 故に、科学的には有り得ない絶対零度に近い温度の移動を再現出来る!

 そう。あの雲に見える存在の正体は、風に乗りて歩むものイタカ
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