第5章 契約
第77話 風の眷属
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左右から襲い来る二体の攻撃。しかし、それでも完全に二体が同期した攻撃ではない。
猛烈な勢いで接近して来る……。しかし、タバサを胸に抱いた瞬間に同期した俺に取っては緩慢な動きにしか見えない黒い生命体の動き。
いや――――
「コウモリに似た羽根。昆虫のような頭・胸・腹と明確に分かれた身体をしている生命体」
キーキーと言う金切り声を発しながら左右から接近して来たその黒い生命体を、一瞬早く接近して来た右側のヤツの方を踏み台代わりにして更なる上空へと退避を行い、同時に召喚した紫電に因って、二体同時に無効化して仕舞う。
「カラスでもなく、モグラでもなく、ハゲワシでも。ましてやアリ、腐乱死体でもない。
成るほど。向こう岸。いや、他所の星からやって来たのはビヤーキーと言う事か」
原色の絵の具をぶちまけて、そのままゆっくりと三度かき混ぜただけのような毒々しい色彩の蒼穹。その異界化した世界の蒼穹を埋め尽くす黒い翼。
こいつら星間生物ビヤーキーは、確かに名付けざられしモノに従う奉仕種族でした。
そして、コイツを召喚する際に使用されるのはハスターに捧げる呪文。
それはそう。この翼人のコミュニティに接近する際に唱えられていた呪文で間違い有りません。
但し、普通の生命体と同じ構造で出来ている以上、多少は頑丈でも手も足も出せないような強敵と言う訳では有りません。
一体や二体を相手にするのならば。
そう考えた瞬間、俺の頬に走る一筋の傷と、そこからあふれ出す紅い血潮。
もっとも、この傷は先ほどの戦闘の際に傷付けられたモノでは有りません。
これは、返りの風。ゴアルスハウゼンの村の護衛用に残して来た剪紙鬼兵が、この瞬間に倒されたと言う事。
まして、この場に現れたビヤーキーの一部が、ゴアルスハウゼンの村の方に押し寄せて居たとしても不思議では有りませんから。
キーキーと言う、非常に耳障りの悪い金切り声を上げながら俺とタバサの元に殺到して来るビヤーキー。その様子は正に雲霞の如く、……と表現すべき状態。
その恐怖心のみをもたらせる膨大な体積の暴風を掻い潜り、周辺に雷光を発し数十羽単位で撃墜して行く俺。
しかし、次から次へと大地から湧き出して来るビヤーキーに対して、その程度の数を屠ったトコロで焼石に水。
そう考えた瞬間――
俺の周囲に荒れ狂う風。いや、これは局地的な嵐。風と水の精霊が荒れ狂いながらも、俺とタバサには傷一つ付ける事はない嵐。
これは間違いない。光りが狂い、狂気の音が支配する世界に現れた援軍。
狂った異界の蒼穹を舞う援軍は、漆黒の翼を持っていた。
(無事ですか、ダイ?)
目が覚めた時と同じ言葉使いで、そう話し掛けて来る翼
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