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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
遠坂凛とアーチャー
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わりを注いでくれる。
 その様子を見ていて、俺の中でこの赤い弓兵の評価が上がったのは否定できない。
 何故かアーチャーに対して不遜な態度を続けるフェンサーの評価が下がったのも否定できない。

 そうしてさすがにそろそろ出直そうかと考え始めていたそのとき──────

「うぅ〜…………」

 ──────凄まじい顔をした誰かが2階から降りてきた。

 形容しがたい遠坂凛のようなその少女は、こちらに気づかず客間を通り過ぎる。

 なんだろう、見てはいけないモノを見てしまった気がする。
 例えるなら白鳥が水の中で必死に足掻いているところとか、おとーさんおかーさんのラブラブしてるところとか。

「今朝はまた一段と……リン、早く顔を洗ってきたまえ」
「アンタに言われなくても行くわよ……」

 ゆらゆらと浮浪者のような足取りであかい誰かさんは多分洗面所の方へと消えた。

 曲がりなりにもアレが学園ではアイドルとされている事実。
 全校男子生徒、いやそれどころか女子や彼女の友人を含めても、この姿を見た者は他にいまい。

 俺も本音を言うならば見たくはなかった。
 一男子として綺麗な花は散ることなく枯れることなく、という夢は見続けていたい。

「凄い顔してたわね。レディにあるまじきよ」
「とんでもなくしんどい作業でもしてたのか、昨日の一件で疲れているからなのか……」
「本人の名誉のために私は黙秘しよう」

 逆にそれは語れば名誉毀損になると明言したようなものではないだろうか。
 二階から降りてきた時点で、思わず声を掛けるのを躊躇うほどのお顔をしていらっしゃったので、戻ってきたときどう対応したらいいかわからない。

 しかし何が理由であんな顔になっていたにせよ、話をしにきた以上ようやく出てきた凛を無視するわけにはいかない。

 俺たちの前を通り過ぎてから10分。幾分かマシな顔になって戻ってきた。

 わーい僕らの遠坂凛が帰ってきたぞー。

 気怠そうなままに対面に座る。

「おは……もうこんにちはの時間か。随分待たせたな」
「今起きたからおはようでも構わな…………?」
「え、どうした?」
「────────」

 まるで幽霊でも見たような顔をしている。
 さっきの凛を見ていた俺も同じような顔をしていたかもしれない。

 この反応を見るに、ここに俺がいるのはとんでもないことなんだな。
 寝起きってことはコイツ人待たせながら寝てたのかと思ったが、そもそも待たせている予定ではなかったのか。
 そのあたりアーチャーと打ち合わせ済みかと思っていたんだが、家の中に引き入れているのは凛の想定外だったと。

 寝起きのあの有様でありながら、学園では完璧女子を演じてるのか。

 女って
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