反董卓の章
第10話 「は、疾すぎ……る」
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は関を落としに来たはず……何故攻撃側がこんな防衛陣地を?)
思わぬ足止めに、私は苛立っていた。
その時。
「か、華雄将軍! 後ろを!」
「なに!?」
まさか回りこまれたか――その時はそう思った。
それは正しかった。
だが、その予想をはるかに越えた事態がそこでは起こっていた。
「関が……燃えているだと!?」
関正面の大手門、そしてその上にある倉庫。
その場所が、天にも届く業火で炙られていたのである。
「ばかな! こんな木も草もない荒野で、何故あれだけの火柱が!?」
「あ、油です! 油を大量に撒かれました!」
「な――!?」
油…………だとしても、あの火柱である。
もし油が撒かれたのならば尋常では無い量だろう。
街一つが焼かれるだけの油が撒かれたのではないか?
その時、傍に居た兵の言葉で、私は凍りつく。
「あれじゃ……もう関に戻れない」
「――――っ!?」
そうだ。
燃えている場所は門中央。
門自体にも大量に油が撒かれたせいか、もはや煉獄の門の様に燃え盛っている。
あれではとても後方には下がれない。
それはつまり……逃げ道は、敵先陣を突破するか、崖に登る細道を駆け抜けるしかない。
だが、前方は柵で塞がれている。
崖に登る道も油を撒いたであろう部隊が、いつの間にか陣取っていた。
(やられたっ!)
私は直感する。
敵は我々三万を逃がす気がない。
あくまで全滅させる気なのだ。
渦のように周囲を包囲され、すでに勢いをなくした魚鱗は崩れている。
もはや陣というよりただの集団。
その恐怖が瞬間的に脳裏ををかすめた矢先。
敵の銅鑼が先陣周囲で鳴り響く。
振り返ったその柵の向こう。
そこに居た、馬にまたがる白い着物の武将が叫んだ。
「これより反転攻勢に掛かる! 各自、半壊した柵を打ち壊せ!」
――――なぁっ!?
バカな! 自分たちを守っていた柵を、自分たちで壊すだと!?
「か、華雄将軍! 左右から敵が――」
部下の言葉に、振り返る。
そこには油を撒いたであろう部隊が、左右からこちらに向かってくる姿だった。
(三方から攻められたら、全滅する――)
私が抱いた恐怖。
それは、兵たちがより過敏に感じ取っていた。
「か、囲まれたらおしまいだ!」
「だ、だがどうするんだ! 前は柵! 後ろは火! 左右は敵だぞ!」
「いやだ! 死にたくない! 俺はまだ――」
「うろたえるな、馬鹿者!」
誰かが叱咤する声が聞こえる。
いや、誰かではない。
私の声だった。
思わず叫んでいた私に、周囲の兵が縋る
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ