暁 〜小説投稿サイト〜
空を駆ける姫御子
第十三話 〜彼女たちのお話 -ティアナ・ランスターの章-【暁 Ver】
[5/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
標を変えることはなかった。目標を変えずに考え方を少し変えるだけで、彼女の精神は──── 見違えるほどに成長を遂げた。怪我の功名とは正にこの事である。

 ティアナは親指に付いたBLTサンドのソースを少しばかり妖艶な仕草で舐め上げると、サンドイッチを両手で持ちながら齧歯類のように齧り付いているアスナに癒やされつつ、マグカップを手に取り口を付ける。いつかのお茶会のような本格的なものではないが、これはこれで悪くないと感じていた。

「アスナは六課が解散した後、どうするの?」

 質問自体に意味はない。ただ、今まで聞いたことはなかったなと思い至っただけである。アスナはティアナに視線を向けることなく蚊の鳴くような声で答えた。

「……いちゃいちゃする」

「あぁ、そうですか、コンチクショウ」

 聞くんじゃなかったと後悔しながらも話に花が咲いていく。昔話。訓練校時代のどたばた。担当教官は意外と面白い人物だったこと。他校の生徒を蚊トンボの如く叩き落とし、伝説を作ってしまった恥ずかしい話。今の話。フェイトの天然は面白いので、放置決定。八神はやての独特な言葉は『カンサイベン』と言うらしく、高貴な身分の者しか話すことは出来ないという嘘くさい話。エリオとスバルの胃袋(ブラックホール)に関しての考察。諦めずに手を伸ばし続けていれば──── いつか飛べるかも知れないということ。

 どれもこれも他愛のない話ではあるが、『魔法』などという力を使うとは言っても、彼女たちは特殊でも特別でもないのだ。少々失礼な話をしたところで咎める者などいない。彼女たちを見ているのは精々──── 夜空の月ぐらいのものだ。こうして優しい光に見守られながら彼女たちの夜は更けていった。それにしても……嵐の前の静けさとは、よく言ったものである。





 桐生アスナが、その少女と出会ったのは全くの偶然であった。日課となりつつあるザフィーラとの散歩の途中。アイスクリームの屋台でソフトクリームを買い、公園のベンチでのんびりと食べるのが、最近のお気に入りであった。いつものように食べている途中でコーンの底へ齧り付こうとするのを、ザフィーラに袖を引っ張られ止められていた時──── その少女は現れた。

 歳は十二、三であろうか。背はそれほど高くはなく、ブルネット(焦げ茶)の髪を三つ編みにしている。幼さが残る顔に大きな眼鏡をかけ、何より幼い印象とは不釣り合いなほど大きな胸が、白いブラウスを押し上げていた。

 少女はアスナが座っているベンチの隣へ陣取ると、何も言わずにじっと見つめている。いや、正確には──── ソフトクリームを。アスナがソフトクリームを隠すように反対側へ体を向けると、目の前に少女の顔があった。思わず仰け反る。ソフトクリームと少女の顔を交互に見つめ、ダイエッ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ