第十三話 〜彼女たちのお話 -ティアナ・ランスターの章-【暁 Ver】
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人を自認しているティアナにはどうやったらそんな発想が出てくるのか、さっぱり理解出来なかった。彼女と出会った当初は本気で悩んだものだが、ある日それに気がついてからは、好きにさせている。彼女がたった一人で暗闇の中にぽつりと立っていた頃。そんな悪戯をする事はなかった。それは、つまり────
──── ティアナ
彼女独特の──── 静謐な声に引き戻される。呟きのような声量である筈なのに。その声はいつでも、どんな時でも。ティアナの耳へ届けられた。
「……どうかした?」
「ううん。何でもないわ」
明日の朝。恐らく面白い事になるであろう、もう一人の親友へ心の中で合掌しつつ紅茶を運んでいく。因みに翌朝ティアナの予想通り、『あたしのへそにゴマがっ』と言う、とある少女の叫び声が寮内へ響き渡る事になるが、へそにゴマがあるのは別段おかしい話ではないので、誰も気に留める事はなかった。
「……むずかしい?」
アスナの言葉は主語がない事が多く、慣れていないと聞き返してしまうが、ティアナは特に気にした風もなく答える。
「そりゃぁね。執務官試験はまだまだ先だし、キャリアもないけど、やっておくに越したことはないから」
そう言いながらアスナが持ってきた夜食であるサンドイッチを口へ運ぶ。パンは表裏きっちり焼いてあり夜中に食べることを考慮して、具材は野菜を中心に使っているようだ。彼女達と出会い、以前のような妄執じみた『執務官』への固執はなくなったが、ティアナにとって一つの目標であることに変わりはない。
ティアナ・ランスターは十にも届かぬ幼き頃に、唯一の肉親であると同時に心の支えである兄を次元犯罪者に殺害された。そんな状態の時に追い打ちを掛けたのが、自分の利にしか興味のない愚かな大人である。彼らは葬儀の最中であるにも拘わらず、ティアナの兄を非難したのだ。幼い精神が崩壊してもおかしくない苦痛を立て続けに受けた彼女の『脳』は何をしたのか──── 『掏り替え』である。兄の目標であった執務官をティアナの目標であるかのように掏り替える事により生きる糧を与え、自我の崩壊を防いだのである。要するに──── 勘違いなのだ。
何かに取り憑かれているように執務官を目指していた理由も、これなら納得である。彼女は──── そうしなければならなかったのだから。だが、それも。ティアナ・ランスターの精神が肉体と共に成長し、彼女の『脳』が問題ないと判断した為か、それとも別の理由によるものなのかはわからないが。自称『頑固なお節介焼き』と、『歩くトラブル製造器』の巻き起こす喧噪と優しさによりティアナ・ランスターはある日突然。至極あっさりと、それに気付くことになる。しかし、彼女は執務官という目
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