第十三話 〜彼女たちのお話 -ティアナ・ランスターの章-【暁 Ver】
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────── これが、今のあたしだ。
「なぜ、俺がそんな事をしなきゃならないんだ」
とある場所の、とある一室。デスクが数席あるだけの殺風景な一室に、男二人が向かい合って座っていた。管理局内部で発生した事件を専門に捜査する──── 内部調査室。場合によっては、他の部署と連携することもあるが、その任務の性質上、それは希であった。何しろ正式な人数や所属している局員に関しても非公開なのだ。部隊の場所自体も定期的に変わるという徹底ぶりだった。部屋が殺風景なのは、その所為である。
若い男に問われた──── 恐らく上司なのであろう男が呆れたように答える。
「あのな、おまえは事あるごとに『何で俺が』だの、『面倒』だの言うがな。こんなことを今更言うまでもないと思うが、仕事だからだ」
正論故に、若い男は黙るしかない。
「『やれやれ』だの、『……ったく』だの『しょうがねぇな……』だのも多いが、それは口癖か何かか? ……まぁ、いい。こんなことは言いたかないが、おまえが食ってく為の金はどっから出てるんだ? ウチからだろうが。それは、ミッドチルダに住んでいる人達が納めた税金でもある。仕事なんだよ、わかるか? 食ってく為には仕事をしなきゃならん、当たり前だな?」
「……いつから行けばいいんだ」
「明後日だ。レジアスの依頼ってのが、業腹だが無下に断るわけにもいかん」
「……わかった」
若い男は不満を隠すこともなく呟くように告げると、部屋を後にした。上司は若い男が消えていった扉を見つめ嘆息する。悪い人間ではないのだが、自分は特別だと考えているような発言が多く、上司は若い男を持て余し気味であった。一匹狼などと言う言葉はあるが、現実ではあり得ないのだ。野生の狼でさえ群れで行動するというのに。一計を案じていたところへ舞い込んできたのが、レジアス中将からの依頼だった。
──── 機動六課の内情を探って欲しい
渡りに船とばかりに依頼を受けた。要するに──── 厄介払いである。こうして機動六課に爆弾を抱えた傍迷惑な男が赴任してくる事が、決定してしまった。
物音一つしない静寂に包まれた部屋に──── ペンを走らせる音だけが響いていた。ここミッドチルダでは些か古風な学習スタイルではあるが、何かをこつこつと積み上げていくような感覚が彼女の性に合っていた。スカイブルーの簡素な寝間着に身を包み、デスクに齧り付いている姿はいかにも受験を控えた女子学生という風情ではあるが、彼女は歴とした管理局員である。
デスクの上にある時計に視線を走らせる。彼女は時刻を確認すると、ペン先の反対側で顎を突きながら暫し考えていたが、やがてペンをノートの上へ放り投げ
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