海に行ったら、黄昏る その二
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出た俺は、置いてあった薬をさっそく飲んで自分の部屋に戻る事にした。
篠ノ之束が言った通りに薬を飲んだ俺の身体の調子はみるみる回復していた。
ようやく苦痛から解放され、自分が元の健康体に戻った事に幸せを感じつつ部屋に戻った俺に待っていたのは……恒例といってもいいコントだった。
「お帰りなさい、あ・な・た。ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?」
胸の辺りで手を束ね、期待に満ち溢れた表情をした山田先生がにじり寄ってくる。
流石に裸エプロンという格好はしていなかったが、こんなことをする山田先生のことを思わず可愛いと思ってしまったのは一生の不覚だろう。
「ご飯は食べたし、お風呂にします」
俺は山田先生から視線を逸らし、そっけなくそう言って着替えを取りに向かう。
山田先生の表情はちょっとだけ悲しそうに見えた。
俺の心がチクリと痛む。
なぜだか罪悪感を感じる。
じゃあ俺はこんな風に言えば良かったのか?
「先生でお願いします」
と言って山田先生を抱きしめ、
「一緒に大人の階段を昇りましょう」
なんて言える訳がないだろう。
てなことを考えつつ、風呂で身体の汚れと疲れを洗い流し、さっぱりとした気分で出ると、そこにはすでに布団が敷いてあった。
気休めにしかならないだろうが、旅館の人に頼んで部屋のを仕切るための衝立てを用意してもらったんだが、それがまったくといっていいほど意味をなしていなかった。
衝立ての奥に布団が二つ並んでいる光景を見たからだ。
「……山田先生」
俺が疲れたような声で言うと、
「冗談です」
と言って並んでいた布団をいそいそと引き離しにかかっている。
今日は疲れた、もう寝よう。
俺は髪を乾かした後、山田先生に先に休みますと言って邪魔にならないように部屋の奥の方にある布団に入って横になる。
今ごろセシリアは、同じ部屋の女子たちに浴衣をひん剥かれた挙句、自慢の黒の勝負下着を見られ、
「セシリアはエロいなぁ」
とか言われているのだろうか。
それとも、一夏ハーレム五人衆はすでに一夏の部屋へと入り、織斑先生と女子会を開催しているのだろうかと考えていると、俺は疲れのせいもあっていつの間にか眠りの世界へと誘われていた。
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