海に行ったら、黄昏る その二
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に異変が起きたのはその頃だ。
差し込むような腹痛が俺を襲ってきた。
俺は会話中の女子に中座を許してもらい、心配そうにしている女子に「大丈夫だと」告げ、大宴会場を飛び出した。
実際は全然大丈夫じゃなかったんだが。
とにかく近くにあるトイレの個室へと駆け込んだ。
食事に下剤を入れられた、食事に下剤を入れられた、食事に下剤を入れられた。
いつの間に俺の食事に下剤を入れたのかは知らないが、なんてことをしてくれたんだよ。
俺は今、トイレの個室の中で腹痛と格闘していた。
お腹はきゅるきゅると鳴り、痛みがお腹全体を荒れ狂う。
さながら、内蔵をギュウギュウと雑巾絞りされたようなそんな痛みだ。
身体の中身がすべて出てしまいそうな感覚に襲われながら、俺はトイレの個室の中でうめき声を上げ苦しんでいた。
どうして食事に下剤を入れられたと解ったかというと、その原因となった人間がドア越しにいるからだ。
ドアを挟んだそこにいた人間――。
「さすが天才束さんが作った強力下剤だねー。効果てき面だ」
初めて聞いた篠ノ之束の声。
他の人間もそうなのだが、一夏周りにいる人間は妙にどこかで聞いたことがある声ばかりなのは仕方がないのかもしれない。
ドア越しなので表情は解らないが、声のトーンは悪い事をしたなどと微塵も思っていないような軽い物に感じた。
「何でこんなことをしたんですか、篠ノ之束」
俺は自分のお腹を押さえつつ、喉から声を絞り出したかのような声を出す。
「いっくんの邪魔をさせないためだよ」
「何で俺にそんなことを言うのか解りませんが、邪魔するつもりもあらませんし、しませんよ。下剤を使う前に一言俺に相談して欲しかったですね」
「あれ、あれ? 意外と素直だねー。薬が効きすぎたかな? 嫌だと言ったら一週間ほど苦しんでもらおうかと思ったけど、まあいいか。次に何かあったらキミに相談することにするよ。ここに薬置いとくから飲めば腹痛なんて一発で治るよん。ところで、キミの名前はなんて言うんだい」
俺は間髪置かずに答える。
「アーサー・ベインズ」
「あっくんか。覚えとくよ」
さっきとは声のトーンはあきらかに違い低めの声。
俺に約束を忘れないでと告げた人物は、間もなくドアの向こうから気配が消えた。
篠ノ之束。
人の食事に下剤を入れるなんて、なんて迷惑なヤツなんだ。
天才にして天災とは良い喩だよ、まったく。
しかし、他人に興味を持たないはずの篠ノ之束が、なんで俺の名前何て聞いたのか解らないけれど、天才の考える事は凡人たる俺のにはきっと推し量ることなど出来ないだろうな。
とりあえず這い出すようにトイレの個室から
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