一幕 檻に自ら帰ったウサギ
2幕
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――施設の外に出てすぐ、地面に下ろしてルドガーが支える少女に、ジュードが治癒功を当てた。
少女がゆっくりと目蓋を開ける。虹彩が露わになり、レイアは、仲間たちは、息を呑んだ。
その赤は柘榴か、はたまた鮮血か。
少女の目はルドガーに固定された。少女の指がルドガーのワイシャツを摘まんで。
「パパ――」
……この後の混乱は語るまでもないだろう。ジュードは「ルドガー子供いたの!?」と騒ぎ、アルヴィンは「最近の若者は進んでるねえ」と冷やかし、エリーゼは「見損ないましたー!」と涙目、エルは不潔といわんばかりの白眼視。ローエンが宥め役に回ってくれて本当によかった。
レイア自身はというと、ルドガーとジュードの騒ぎっぷりに逆に乗り損ねてしまったクチである。こういう時、実は自分は常識人なのでは、としみじみ思い馳せるレイアである。
収拾がついたところで、ルドガーが少女に質問を始めた。
「君の名前は?」
「フェイ。フェイ・メア・オベローン」
「フェイ?」
驚きの声を上げたのはエルだった。エルは全員の視線を集めて気まずくなったのか、リュックサックのベルトを握って縮こまった。
「どうした、エル。心当たりがあるのか」
「……なんでもない」
エルはルドガーから目を逸らす。そっぽを向いた翠には、幼女らしくない、ままならない感情。
「ええっと。何で俺のこと、パパ、って呼んだのかな?」
「パパじゃないの?」
「悪いけど俺は結婚もしてないし子供がいる心当たりもないんだ。何よりフェイみたいに立派な娘がいる歳でもないし」
重要なのソコかいな、とアルヴィンからツッコミ。
「パパと同じなのに?」
「どこが同じ?」
フェイは手を上げる。手はしばし虚空をさまよい、ルドガーの胸板に辿り着いた。
「ココと、この中」
抽象的すぎてお手上げです――ルドガーがジェスチャーで伝えてきた。
それからレイアたちにバトンタッチし、フェイにルドガーはフェイの父親ではないと分かってもらうまでに1時間を費やした。
「ところでさ、フェイはどうしてあんなとこにいたの?」
パパ発言で流れていた核心にレイアは切り込んだ。
「帰ってきたの」
「帰って? じゃあフェイは元々あそこにいたの?」
こくん。フェイは無言で肯いた。陸に揚がったばかりの人魚のようにぺたんと座り、地面に長すぎる髪を散らばらせて。
「帰ってきたら、全部枯れてて、機巧人形も停まってた。わたしが住んでた頃と全然ちがうトコになってた。見てたらなんだかココがジンジンしてきて、動けなくなった」
フェイは自分の胸の上に右手を当てた。
「そしたら兵隊さんがイ
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