開幕前 湖底の亡霊
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ゃないんだ…君は悪くないんだよ……ごめん、ごめんね…”
青年の両腕が再び少女を抱いた。人生で一度も抱擁された経験がなかった少女は、青年の腕が氷より冷たいことも気にせず思いきり青年にすり寄って甘えた。青年はさらに少女の頭もなでなでしてくれた。少女はますます青年がスキになった。
“本当に取り返しのつかないことをしてしまったんだね。僕らも、彼も”
(カレ、は、パパ? あなたはパパのなに?)
“トモダチだよ。いや、トモダチだった、かな。僕だけじゃない。みんな君のパパのトモダチだったのに”
青年がふり返った先には、藻に紛れてしまいそうなほど水底と一体化した、黒い煙がぶわぶわと広がっていた。黒い煙は時折思い出したようにカタチを成した。
それは女の子の嘆きの目であったり、懺悔を求める老人の手であったり、少女の父親に呼びかけるだけの男の口であったりした。
(アレ、みんなパパのオトモダチ?)
“そうだよ。最後まで残ったのは僕だけだった。僕らがこわい?”
(よく、わかんない。でも、 ももうすぐナカマイリすると思うから)
“……だめだよ。君はこんなとこに入ってきちゃいけない”
青年が少女の顔を固定し、額に額を重ね合わせた。
“この力が少しでも君の助けになりますように”
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