暁 〜小説投稿サイト〜
黄砂に吹かれて 〜Another version〜
第二章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「それがなくなったのよ」
「思い入れ?」
「ええ、そうなのよ」
「仕事に思い入れがない?」
「こだわりかしらね、ここはこうしないと駄目とか」
「つまり意地がなくなったのね」
「そう思ってくれるならそれでいいわ」
 相手がどう思おうとも、私はそのことも関係なく思えるようになっていた。このことについても無関心になっていた。
「それでね」
「そうなの、とにかくね」
「今の私はなの」
「仕事完璧よ」
 そこまで出来ているというのだ。
「何もかもがね」
「ならいいことなのね」
「悪い筈ないでしょ、仕事が出来て」
 同僚は笑顔で話す。
「それならね」
「そういえば皆今は私を頼りにしてくれているわね」
「嬉しいでしょ、そのことが」
「そうね」
 やはり相手を見ないで作り笑顔だった、けれど相手は気付いていない。
「それはね」
「頼りにしてるわよ、私も」
 同僚は明るい笑顔で私に話してくれる。
「これからもね」
「ええ、じゃあね」
「頑張ってね」
 私にこうも声をかけてくれた、けれど。
 その頑張るということも私には届かなくなっていた、何もかもが動かず空虚なままだった。都会にいてもそれでもだった。
 何も感じない、本当に。
 何をしても何処にいても感じない、どんなドラマを観ても音楽を聴いても。
 砂漠にいる様だった、家ではいつも一人だった。部屋はいつも綺麗にしていても。
 ただ綺麗なだけで何の味もない、砂しかない様に感じた。 
 誰を観てもだった、合コンに誘われてどんな人と出会っても。
「いい人だと思うわ」
 いつもこう思うだけだった。
「けれどね」
「えっ、付き合わないの?」
「そうなの」
「遠慮するわ」
 その合コンの後でだ、友人達に言った。冷めた口調で。
「私はね」
「けれどあんないい人いないわよ」
「収入だけじゃないじゃない」
「性格もいいし」
「外見だって」
「ええ、そうね。けれどね」
 彼とは違う、この言葉は私の心だけで呟いた。
 そしてだった、私は。
 誰とも一緒にならず誰も見ても何も思わないままだった。飲んでも酔わなかった。もっと言えば酔えなくなった。
 それでも飲む時は飲んだ、バーのカウンターで一人で飲む時が多くなっていた。そこで二人だけの時を思い出すばかりだった。
 そしてここでもだった、自嘲を込めて呟いた。
「終わったことなのにね」
 こう言うだけだった、終わった恋終わるしかない恋だとわかっていても。
 それでも忘れられない、私はカクテルを飲みつつ自嘲の笑みを浮かべるだけだった。
 その私にだった、カウンターの中にいるバーテンダーが声をかけてきた。
「お客さん、晴れないというかね」
「違うというのかしら」
「砂みたいだね」
 こう私に言
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ