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万華鏡
第四十六話 ゆるキャラリレーその一

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                  第四十六話  ゆるキャラリレー
 部長が軽音楽部の女子達を前にして話していた。
「いい、皆」
「はい、部長」
「今からですね」
「そうよ、遂にこの時が来たからね」
 だからだというのだ、両手を自分の腰の左右に当てて立って話している。
「気合入れていくわよ」
「気合入れて走るんですね」
「今から」
「その通り、何があってもね」
 ここから言う言葉はというと。
「怪我はしないこと、目立つことよ」
「その二つですね」
「それだけはですね」
「何があっても」
「そうよ、守って走ってね」 
 こう部員達に訓告の様に話すのだ。
「わかったわね」
「はい、ただ」 
 ここで部員の一人が部長に言う。
「一つお聞きしていいですか?」
「ええ、何なの?」
「部長も走られるんですか?」
 その部員は右手を挙げて部長に問うていた。
「やっぱり」
「そうよ、この格好でね」
「鹿三郎で、ですか」
「ええ、これでね」
 奈良のゆるキャラだ、勿論八条グループの企業の中でのゆるキャラだ。ずんぐりとした鹿である。頭にはちゃんと角もある。
「走るわよ」
「そうですか」
「ちょっと私にはぶかぶかだけれどね」 
 部長は小柄だ、その彼女が着るとそうなっていた。
「怪我しないで目立ってくるわね」
「わかりました、じゃあ応援させてもらいます」
 狸の格好のその部員が応える。
「じゃあ私、市川團十郎狸はここで」
「あんたは応援だったわね」
「はい、讃岐から来てです」
 香川県のマスコットというのだ。見ればその左手にはうどんもある。
「そうさせてもらいますね」
「応援しっかりね、いい皆」
 部長はその鹿の格好で右手を拳にしてさらに言う。
「頑張るわよ」
「それで次につなげるんですね」
「文化祭ね」
「そうよ、二学期の二大イベント」
 言うまでもなく運動会はその一番目のものだ。
「ここで目立ってね」
「次の私達にとってのメインイベントにもつなげるんですね」
「文化祭に」
「そうよ、ここで思いきり目立ってね」
 そうして意気を上げてだというのだ。
「文化祭もいくわよ」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 部員達も応える、こぷしてだった。
 軽音楽部もまたリレーに出場する、観客はその彼女達を観て言うのだった。
「おいおい、女子軽音楽部凄いな」
「ゆるキャラかよ」
「動きにくそうだな」
「しかも暑そうだな」
「けれど可愛いな」 
 観ながら笑顔で話しての言葉だ。
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