暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第五九幕 「トツカノケン」
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装甲版が何枚か脱落し、機体の最低限の機能を保護するためにシールドエネルギーが10消費される。

後一発当てるだけで簪は僕に勝てる。後一発で僕は負ける。

そのスリルが、ユウにとってはどうしようもなく堪らない瞬間だった。

この危機を乗り越えられるか、乗り越えられないか、その試練が自分を試す。簪とシャルの目を覚ませるかどうかが次の一瞬で決まる。乗り越えられなければそれで終わるが、乗り越えられれば僕はまだ先に進める。まだ先に、もっと上へ。


運命の一撃が放たれた瞬間・・・風花の背部、破損した1番スラスターが――文字通り爆発した。


会場の観客は一瞬凍りついた。故障。その2文字が全員の頭をよぎり・・・それが間違いであったことに気付かされる。



「残り10のエネルギーの使い方は・・・こうだぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあッ!!!」



――バーナー内部にエネルギーを許容限界以上に圧縮させ、強度を無視した威力の爆発で噴射加速以上の速度を得る。名付けて、「暴走加速(バニシングブースト)」!!

加速の瞬間、肋骨にみしりという嫌な音が響いた。瞬間的に噴射加速以上の加速を、しかもパイロット保護レベルを落とした状態で使用したのだ。技術とは名ばかりの乱暴すぎる加速はユウの肉体に確実なダメージと疲労を与えていた。めきり、と異音と共に肋骨に激痛が走るが・・・それでもやはりこの男は止まらないのだ。

風花のバーナー類にはブロックシステムという機能がついている。もしバーナーやバーニアの一部分だけが外的、内部的要因で爆発した際に他のパーツに影響を及ぼさないようパージする、そういうシステムだ。試作機などには比較的よくみられるこのシステムならば機体保護機能をカットしても2番ブースターの推進システムは生き残る。あまりに危険すぎて簪にすら教えていない使用禁止級技術。そして、これから使うもう一発が簪に纏わりつく邪念を祓う。


今度こそ言葉を失った簪に迫る風花の身体に変化が訪れる。機体保護に回していたバリアのエネルギーが突如収束を始め、まばゆい光を放ち始めた。美しい桃色の閃光は機体前面へ収束してゆき、花弁のような光の飛沫を撒き散らす。あまりのエネルギー収束率にバリアの収束率が低い端からエネルギーが漏れ出しているのだ。

「・・・綺麗」

会場の誰かが呟いた。桃の花を撒き散らすような美しさは正に「風花」の名を冠するに相応しい。そしてその力はやがて、加速しながら振り絞られた右腕へと収束していく。
それが簪の運命を決めているように見えて、彼女の心と体の動きが止まる。その瞬間こそが本当に彼女の勝敗を分けた。

「・・・そんな、ことが」
「折れたね?“いつもの”君ならこんな所で折れたりしない・・・」
「わ、私は・・・シャルロット、の、
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