過去編
挿話集
小噺集
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誤って『送信』と押してしまっただけなのだ。
「うぅぅ……どうしよ。冗談って事にすればいいかな?いやでも、あながち冗談でもないけど……って、ちがーう!?」
ゴロゴロのたうちまわっていたその時、携帯がメールの受信を知らせた。差出人はもちろん螢。
「うぅぅ…………えいっ!」
98%くらいの不安と2%の期待を込めて、開く。
『ああ。そうだな』
「…………ふぁ?」
一瞬、何が書かれているのかさっぱり分からなかった。自分が送った文章は自分で言うのも憚れる、かなりアレな内容で。
相手は自分の頼みならほぼ間違いなく本気で叶えようとする、あの水城螢なのだ。
その盲目的なまでの木綿季への溺愛っぷりは、あのおしどりカップル和人&明日奈をして「お、おおぅ……」と引かせるレベル。
その夜。木綿季は明日から螢にどう接すれば良いのかを悶々と考えていた。
翌日。
「な……なんだコレは」
携帯電話を握ったまま寝落ちした螢はその画面を見て戦慄が走った。
「……待て待て。誰に悪戯されたんだ?あいつがこんな…………むぅ」
億万が一、本気で送っていたとしよう。だとすると……
「この寝ぼけた返信はまずいだろ……」
ノーリアクションで寝落ちしていたならまだしも、完全に了解しちゃってる旨の文を返してしまっている。
本気にしろ冗談にしろ、俺は今日から一体どのように彼女に接すればいいのか。
「……木綿季が冗談だったら冗談。本気だったら…………責任取ろう」
冷や汗をだらだら垂らしながら螢はそう決意するのだった。
そして、学校。
「…………」
「…………」
暖かな陽光の射し込む中庭。いつもならここで賑やかに弁当を食べるのが2人の日課だが、今日は痛い沈黙が流れていた。
原因はもちろん昨夜の件だが、どちらもそれを切り出せていない。それでかえって『その件を意識している』事をお互いが悟ってしまった。
(……結局、何も思い付かなかったし……どうしよう!?)
無言のまま時間が過ぎていき、ついに螢が口を開いた。
「木綿季」
「な、なに?」
「昨日は、どうしたんだ?」
そのド直球な質問に木綿季は意識が遠退く思いだったが、正直に答えた。
「えっとね……。メール打つ練習してたら何か無意識のウチに……それで間違って送っちゃって……ごめん」
「あー……つまり間違って?」
「う、うん。……螢があんな風に応えて来たのは、ちょっと驚いたけど……」
その応えに螢は苦笑いと、少し気まずそうに頬を掻きながら言った。
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