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ソードアート・オンライン〜黒の剣士と紅き死神〜
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 1,鍜冶屋の少女


 気だるい陽気の中、レイは何か目的がある訳でもなく中層の街をただ歩いていた。
 いや、正確には武器と防具の整備という目的があるのだが逆に言えばそれしかやる事が無い。主街区のメインストリートの道端にはアイテムを売ったり、おやつ感覚の食べ物を売る店、そして武具を並べる武器屋。

 武器屋で鍜冶屋を兼任している者は脇に簡易な炉を設置し、声を張り上げている。

 だが、所詮は中層プレイヤー向けの中級品。一応、最前線で戦っている身であるためそれらに命を預ける気にはならない。

 さらに言えば……何とも空虚な武具達である。魂が入っていないと言うのだろうか。

 アン・インカーネーション・ワールド……『具現化する世界』、アインクラッド。

 この世界に付けられた名はその意味の通り、『思い』を具現化する力がある―――と、聞いている。最初は鼻で笑った話だが、実際に目にしてみれば納得のいく話である。
 営業スマイルを顔に貼り付ける店主に綺麗に並べられた空虚な武具達……そして押し込まれるような狭いスペースに陣取り、少ないながら確かな意思の力を感じる武具を並べる、簡素で地味な服をまとった少女。

(ふむ……?)

 何故押し黙ったままなのか。単純な武器の良し悪しの性能を見れば周りの武具屋と大して変わらない。

 にも関わらず、目立っていないその店に客は気がつかない。

 何の気無しにその店の前にしゃがみ込む。すると―――

「い、いらしゃい……ませ」

 ……噛んでるし。

「……見ても?」
「ど、どうぞ!」

 途端に顔を輝かせて脇に置いてあった剣やらピックなどをズイ、と押し出す。
 俺の背中には愛刀である大太刀が堂々と自己主張している。故に鍜冶屋ならば刀系の武器を出すのが常識だ。
 視界の範囲内に刀系の武器は存在しない、気付く様子もない。

 ……よっぽど客が来たのが嬉しいのか。それともテンパっているのか……恐らくは両者だろうが。

「……それじゃあ、このピック貰おうかな。いくら?」
「は、はい!30本セットで1000コルです!」
「…………は?」

 絶句。もう一度脇に書いてある性能と値段を比較して考える。どう考えても…………

「た、高いですか?えっと、なら「違う違う」え?」

 少女の目の前で手を振って制止する。

「……安過ぎだ。中層ならその程度の値段でしか売れんだろうが、最前線だったらこのピック……後その剣と奥の槍2本。倍の値段で売れる」
「さ、最前線!?そ、そんな……あ!」

 少女の視線が背の大太刀、そしてマントの下のツヤのある革防具に注がれる……と、同時に俺が何者であるかを悟ったようだ。
 未踏破の迷宮を次々と突破し強力なフロアボスを葬
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