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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十一話 フェザーン謀略戦(その3)
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った。そして身体が強張っている。

皆が困惑した表情をしている。ルビンスキーの様子から嘘ではないのだろうと思っているのだろうが、今一つピンと来ないのだろう。ま、そうだろうな、地球など過去の遺物だ。それがフェザーンの支配者? まるで幽霊でも見た気分だろう。

「皆、説明を求めているようです。どうします、貴方が説明しますか、アドリアン・ルビンスキー」
俺は敢えて名前を呼んだ、お前など自治領主の名に値しない、そういう事だ。その意味が分かったのだろう。ルビンスキーの顔が屈辱に歪んだ、身体が微かに震えている。もうひと押しだな。

「その状態では説明は無理ですね、良いでしょう、私が説明しましょう」
俺はわざと肩を竦めた。その瞬間、ルビンスキーが掴みかかってきた。リンツが抑える前に、デア・デッケンが防ぐ前に、俺の拳がルビンスキーの鼻に炸裂した。

痛みに怯んだルビンスキーをリンツがソファーに押さえつけた。ブルームハルトがレムシャイド伯の肩に手をかける。騒ぎに便乗させない、そういう事だろう。残念だったな、ルビンスキー。何のためにお前を挑発し続けたと思っている。暴発させるためだ。今の姿はサアヤがしっかりと録画した。お前が地球の傀儡であることの何よりの証拠だ。俺はこれが欲しかったんだ。ルビンスキー、所詮お前は狐だ、狸の敵じゃない。

ルビンスキーが鼻から血を出している。レムシャイド伯が信じられない物を見たように首を横に振った。リンツ、ブルームハルトも困惑を隠さない。二人の上司は面白そうな表情をしていた……。なんでだ?

「ヴァレンシュタイン、地球がフェザーンの真の支配者とはどういう事だ。説明してくれ」
レムシャイド伯が困惑を隠さずに問いかけてきた。さっきまでの屈辱など吹っ飛んでしまったようだ。悔しそうなそぶりは毛ほども見えない。

「地球は人類発祥の星でした。しかしその傲慢さが憎まれシリウス戦役によって完膚なきまでに叩き潰されました。それにより政治的、経済的に実力も潜在力も喪失した……。銀河連邦が成立する百年ほど前の事です」
「……」

「銀河連邦も、その後地球を支配下に置いた銀河帝国も地球には何の関心も抱かなかった。地球に住む人間達が地球こそ人類発祥の地であり敬意を払われるべき存在、いや人類の中心であるべきだと思っても銀河の支配者達は全く関心を持たなかった。彼らにとって地球は資源を使い果たし人口も少なく何の価値もない老廃国家でしかなかった……」

レムシャイド伯に視線を向けた。ここまでは良いか、そんなつもりだったが伯も同じ想いだったのだろう。俺に視線を当てたままゆっくりと頷いた。俺も伯に頷き返した。ルビンスキーは顔を顰めて俺を見ている。リンツが肩に手をかけている。指が肩に食い込んでいた。

「当然ですが彼らはその事を恨んだでしょ
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