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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第38話 「皇太子殿下の二面性」
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少佐にはご理解いただけるだろう」
「分かります。よぉ〜く、分かります」

 アッテンボローの声にも、実感が篭っていた。
 その後は皇太子の話題に笑ってしまうような場面も見られた。我々との会談は非公式なもののせいか、気さくな面を見せているようだ。
 これも二面性というものか……。

「しかし改革というのは、むずかしいものだ」

 皇太子が呟くように言う。
 改革の主導者がこの様に言うとは、よほど帝国は膿が溜まっていたのか?
 やはり門閥貴族の反発が大きいのだろうか?

「と言いますと?」
「良かれと思ったことでも、よくよく考えると、それを行った際に起きるであろう問題が浮上してくる」
「良かれと思ったことですか」

 なんだ、貴族との対立ではないのか?

「ああ、改革当初は平民達の権利を拡大と効率化を目指そうと思っていたのだが、効率化は大量の失業者を生み出すことにもつながる。ヤン大佐。大佐は後家殺しというものを知っているか?」
「後家殺しですか?」

 話を振られたヤンが首を捻っている。
 俺も初めて聞く言葉だ。そっち系の話ではないはずだ。

「ああ、脱穀における効率化の為の機械でな。正式にはせんばこぎと言うが、それが開発されて以来、人力が必要とされなくなった。それまでは力ではなく、根気を必要とされる作業であったために、女性、特に後家さん、つまり夫のいない女性が、収入を得るために従事していたが、仕事を失ってしまったのだ。誰が悪いという事ではないが、効率化には良い面も悪い面もあるという話だ」
「改革も同じですか?」
「そうだな。貴族と平民という二元論だけでは、計りきれんものがある」

 帝国という巨大な国家を動かすのだ。
 どこかで泣く者もでてくるだろう。それでもやらねばならんというのが辛いところだ。と皇太子が話す。
 改革というものは綺麗事ではない。という事が伝わってくる。
 それにしても皇太子はよく勉強していた。
 俺と組織論について話し、ヤンとは歴史の話。アッテンボローと身内の話で盛り上げる。
 帝国の兵士達が心酔するはずだ。話をしていると引き込まれるような気がしてくる。

 ■オーディン 宰相府 ジークフリード・キルヒアイス■

「やっぱり、ついていくべきだった」

 宰相閣下がイゼルローンに向かっていらい、ラインハルト様がぷりぷりと怒っている。

「特に、従卒にクラウス・ラヴェンデルがついているんだぞ。あれはやばい。やつはまずいんだ」

 まー彼もラインハルト様と同類ですからねー。
 なにがとはあえて申しませんが……。

「従卒なら俺がやってやるのにっ!!」
「女装でですかー?」
「キルヒアイス〜」

 わわっ、ラインハルト様が怒って追いかけてきた。

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