第38話 「皇太子殿下の二面性」
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
?」
皇太子が軽く肩を竦める。
口元には笑みが浮かび、少し困ったような表情になった。
「ただの好奇心だといったら、笑うかね」
「いえ、笑いはしません。ですが理由が分からないもので」
「いぜん卿の書いた組織運用論を読ませてもらった。中々興味深い内容だと感じたものでね。ぜひ会って見たいと考えたのだ」
そうか、あれか!!
しかし帝国の皇太子までが、読んでいたとは思っても見なかった。
皇太子はヤンの方に視線を向け、エル・ファシルの英雄だな、と確認するように問う。
「英雄と呼ばれる様な事は何もしていませんが……」
「謙遜だな。卿は二百万人もの民間人を救ったのだ。その功績は受け入れるといい。もっとも今の帝国軍が、民間人に暴行を振るうと思われてはいささか困るが」
「はい。兵士達の士気の高さには目を瞠る思いです」
ヤンの言うとおり、士気の高さは驚くべきものがある。
しかも規律正しい。
馬鹿なことを命じる貴族がいなくなったためだろうか?
「さて、ダスティー・アッテンボロー少佐。卿の父親の書いた記事を読ませてもらったが、中々に卓見だな」
「親父……いえ、父の書いたものをお読みなったのでしょうか?」
「ああ、読ませてもらった。そしていつもの様に、親父でいいだろう。私も父の事はくそ親父と言っているからな」
「宰相閣下の父親? ……フリードリヒ四世……陛下?」
皇太子が皇帝の事をくそ親父と呼んでる?
まさか……。
リッテンハイム候に目をやると、候は軽く頷いた。
本当なのかっ!!
いや、嘘を言っても仕方ないだろうが、それにしても本当なのか。
リッテンハイム候が、困ったように額に手をやる仕草を見せた。
「……一つフォローしておくと、決して仲が悪いというわけではない。ただ……皇帝陛下は悪戯好きでね」
そこでまた、リッテンハイム候がため息を吐いた。
「リッテンハイム候、卿も知っているだろう? あのお達者くらぶの悪巧みを」
「まあ、知ってはいますが……」
「だいたい私に、後宮を持たせたのは、あのくそ親父の悪巧みだ」
後宮が皇帝の悪巧み?
どういう事だ? いったい帝国内では何が起こっているんだ?
「帝国では秘密でもなんでもないんだが……皇帝陛下が皇太子殿下を、ぎゃふんと言わせたいとお考えになって、あれやこれやと策を弄しておられるのだ。無駄なのだがね」
「だいたいこどもか、あの親父は? お菓子を見せびらかすように食べてどうする?」
「ありましたなー。あの時は我々の方が呆気に取られたものです」
我々も呆気に取られていると、皇太子が「いや、失敬」といって態度を改めた。
「まあ事ほど左様に、困った親父というものは存在するものだ。アッテンボロー
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ