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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第38話 「皇太子殿下の二面性」
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の上で帝国宰相閣下の前に立ちました。これより和平交渉を致したいと思います」

 腹の底から声を出す。
 どう、でる? 怒って席を立つか……。いや、立つまい。

「同盟側から攻めてこない限り、現時点において帝国に侵攻の意志は無い」

 これだ。この言葉が聞きたかった。
 帝国に侵攻の意志は無い。皇太子は同盟に攻め込んでこないと、明言した。

「ただし、同盟側から侵攻してきた場合、これを迎え撃ち、さらには同盟をも討伐する」

 ふむ。攻撃してきた場合はやり返す、か。当然だろうな。
 やられっぱなしではないだろう。

「そして図に乗るなよ」

 皇太子の声に怖いものが篭った。
 ぞくっと背筋に冷たい汗が流れる。ミシッと空気が軋む音が聞こえた。まるで部屋中の空気が凍ったみたいだ。

「そ、それは……どういう……意味でしょうか?」

 歯が鳴る。口の中がからからに乾いた。

「例えば、ヴァンフリート。イゼルローン攻略のために基地を作っているだろう。そこに大量の兵器を用意して置くとかな。やがて攻めてくると分かっていながら、暢気に構えている気は無い」

 まずい。軍備の意思を見せた時点で、破棄すると言っている。
 このままでは同盟は動けない。
 だが皇太子は、帝国側から侵攻の意志は無いと明言した。
 そしてそれが破棄される場合は、同盟に責任があると宣言する気だ。
 しかしこちらが動かない限り、本当に帝国が侵攻してくる事は無いだろう。
 有言実行。
 皇太子はそういう男だ。言った以上はそれを守る。
 その点は信用できる。
 あとはどれだけ、主戦派を抑えられるかだな。

 ■アレックス・キャゼルヌ■

 同盟の政治家達が部屋から出てきた。
 どの議員の顔も深刻そうな表情を浮かべている。和平交渉はうまく行かなかったのだろうか?

「先輩」

 ヤンの声が潜められた。
 まずいぞ。いつもは陽気なアッテンボローすら、緊張しているようだ。

「こちらへどうぞ」

 部屋の中から女官らしい女性が現れ、俺たちを部屋へと誘導する。
 部屋の中には皇太子とリッテンハイム候爵がいた。
 二人は俺たちが部屋に入ると、さっと立ち上がり招き入れる。

「ようこそイゼルローンへ。卿らを歓迎する」

 皇太子自らが招き入れるとは驚く。
 アッテンボローのやつが緊張して、しゃちほこばった態度になっていた。

「恐縮です」
「いや、気にしなくていい。卿ら三人に会ってみたかった。会えて嬉しいと思う」

 いったい俺たちの何が、皇太子の興味を惹いたのだろうか?
 よく分からん。身に覚えが無い。ぶつけてみるか……。

「お会いできて光栄ですが、いったいどういう訳で、我々を招いたのでしょうか
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