第16話:罪を憎んで人を憎まず
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(妖精の村)
俺は春風のフルートを取り返し、今回の事件の当事者達と共に妖精の村のポワン様の下へ帰ってきた。
村に入って直ぐに、人々から好奇な目で見られた。
仕方ない事ではあるのだが、気分の良い物ではない。
モンスター2匹を連れ歩く人間の子供と、エルフ・ダークエルフ・ドワーフの子供と老人が一団となって移動する姿は驚愕だろう。
だから我慢はするのだが、ベロニカを指さし『あれってベロニカよね!? やっぱりあの娘は問題児だったのね』と言ってくるエルフには腹が立った。
生まれや血筋で、その人の為人が決まるわけではない。
そんなくだらない事で他者を誹謗し、自身のアイデンティティーを確立させる輩には、ガツンと言ってやりたかった……けど、暴力に訴えられたら絶対負けるので今回は許してやろうと思う。俺って優しいよね。
でもやっぱり腹立つので、今回の事件の経緯をポワン様に報告するついでに、それとなく密告ってやろうと思います。
俺に視線を向けたポワン様が……
「アルスよ、春風のフルートを取り戻してくれて本当にありがとう」
と、俺に手を差し出しフルートを受け取ろうとした時……
「ポワン様……今回の事件は、村の人々の傲慢さが原因で発生した事件でもあると思います」
と、徐に話し出す。
やっとフルートを取り戻せたと思ってたポワン様は驚きを隠せない。
「そ、それは如何な意味でしょうか? 後ろに控えているベロニカが原因でしょうか!?」
「まぁ……原因と言えば原因ですけど、根本はもっと違う事だと思います」
不安を隠せないベロニカを見て、軽く頷き彼女を安心させてポワン様に答える。
「ここに戻る途中、一人のエルフさんがベロニカに向かって言いました。『やっぱりあの娘は問題児だったのね』と……“やっぱり”って言ったんです。これはつまり、何もしてない時からベロニカに対して差別的な視線を向ける……或いは、行為・発言を行ってきたと言う事です。彼女は心ない者達に、精神的苦痛……所謂イジメに遭ってきたんです!」
「そ、そんな……間違いないのですか!? 私にはそのような報告は一度もありませんでしたよ?」
「誰が報告するんですか? イジメてた本人ですか? イジメを容認し、傍観してた他者ですか? 傍観……つまり何もしなくても、それはイジメと同義ですよ」
ポワン様はかなり狼狽えている……まぁ当然だろう。自分の納める村で、心ないイジメが発生してたのに、それすら気付かずにいたのだから。
「ベ、ベラ……貴女は何時もベロニカと仲良く過ごしてたではないですか!? 何故報告をしなかったのですか?」
「あ、いや……それは「ポワン様……ベラにそれを求めるのは些か酷ではないですか? 彼女ほど空気の読めない女は居ませんよ!」
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