休養
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しようと思ったんだけどね」
お湯を注ぎつつ大は苦笑する。同時にお湯が注がれた影響か、部屋に濃密なコーヒーの香りが蔓延った。
「おー、いい匂いねー」
「でしょ? 千姉ちゃんは何か入れる?」
「ブラックで大丈夫よ。それにしても随分と手馴れたもんねぇ」
「まぁ毎朝淹れてるしね」
大はコーヒーを作りつつ、千李に褒められたことが嬉しいのか、少しにやけている。
そしてコーヒーができあがり、二人はそれを一口のみ深く息をついた。
「美味いわねー。コクがいい……」
「ありがと、それで千姉ちゃん、ニュースで聞いたけどなんだかすごいことになってるっぽいね」
「あー……まぁね。大も知ってると思うけど私のじいちゃん。川神鉄心を私が倒しちゃったもんだから報道陣が押しかけてきてねー」
「それで極楽院に避難?」
「そんなところ」
肩をすくめながら千李は苦笑する。大もそれに笑っているが千李と同じく苦笑いだ。
「それでツインテールにしたり、眼鏡かけてるんだ」
「変装にすらなってない気もするけどね」
「確かに、でもツインテールにしてるからか若干幼く見えるね」
大はにこやかに笑いながら千李を見る。千李はそれにげんなりとしながら、
「さすがにこの歳でツインテは精神的にやばいわよ……」
「そうなの?」
「男はわかんないでしょうけどねー」
明後日の方向を向きながら、千李はふてくされる。だが、それによりさらに幼く見えた大は声を出して笑ってしまった。
だが、千李の鋭い眼光に睨まれ、すぐに声を押し殺した。
「そ、それで千姉ちゃん話って?」
軽く咳払いをしつつ、大は話題を変える。千李もそれに小さく息をつきながら答えた。
「まぁ話っていうかただ単に遊びにきただけなんだけどね」
「なんだ、そうなの」
「昔話を三人でしようかと思ってね。そういえば冴子さん教師やってるんだって?」
「うん、俺が通ってる高校でね。信じられないでしょ?」
「うん、信じられない。だってあの冴子さんでしょ? 元ガキ大将の」
千李はコーヒーを一飲みしながら大に投げかけるように掌を向ける。それに対し、大も怒ることもなく小さく笑っている。
「どんな授業してんの?」
「科目は数学。学校だと結構人気があってさ、生徒からも信頼されてるよ。まぁ猫被ってるんだけど」
「フフッ、冴子さんらしいわね」
二人が笑いあってると、
「ただいまー」
玄関の方で女性の声が聞こえた。
「ヒロー! 誰か来てるのー?」
その声とともに、リビングと廊下を隔てる扉が開けられる。
リビングにやってきたのは、栗色の髪を後ろで一括りに
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