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今を生きる
第四章
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 彼もまた鬼の武専にまで入る様になり柳生新陰流免許皆伝を授かりそれからも修行を重ねた、そしてようやく身に着けたのだ。
 しかしだ、それでもなのだ。
「身に着けたものは所詮だ」
「鉄砲や弓矢とは比べものにならない」
「その程度のものですか、戦の場では」
「しかし何故極めるか」
 戦では使えない、では何故極めるかというと。
「それはだ」
「道だからですか」
「己を磨くことですか」
「うむ、私もそれで気を使うことを身に着け」
 さらにというのだ。
「今も剣の道を歩んでいるのだ」
「今もですか」
「そこまでの腕に至られても」
「解脱してもまだ先があるという」
 ここで仏教の話も出る、仏教では解脱してもまだ先があると言われている。そして解脱する者も誰で終わりとはないのだ。最終解脱なぞ有り得ないのだ。
「そのことと同じだろう」
「解脱されても」
「それでも」
「そうだ、まだあるからな」
 それでだというのだ。
「私は己を磨く為に剣の道を歩んでいるのだ」
「それが先生の剣ですか」
「活人なのですね」
「そういうことだ、戦では実際には役に立たずとも」
 この現実があってもだ、それでもだというのだ。
「何故武士の心であり続けていて今も残っているのか」
「そういうことですか」
「それでだったのですか」
「そうだ、ではな」
 ここまで話してだ、森下はそれまで抜いていた剣を己の鞘に収めた。そのうえでこう学生達に告げたのだった。
「これまでだ、では壊した灯篭を収めてだ」
「はい、そしてですね」
「そのうえで」
「この場は終わりとする」
 それでだというのだ。
「ではな」
「はい、では」
「これで」
 森下の言葉通り真っ二つにされた灯篭が収められてだった、そして。
 彼もまたその場を去った、後に残った学生達が話したのだった。
「今日は凄いものを見たな」
「凄いことを教えてもらったな」
「剣の道か」
「それが今あるものか」
「刀の時代じゃなくてもな」
 このことは厳然たる事実だ、それでもだというのだ。
「今も剣はあるんだな」
「その心が」
 こう話すのだった、真剣な顔で。
 そしてだ、もう灯篭も森下も収められ去ったその場所を見つつさらに言うのだった。
「我々も今はな」
「ああ、そうだな」
「剣道、今も残っているその道を学ぶか」
「そうしていこうか」
「そして生きようか」
「己を磨いてな」
 こう話してだ、彼等も一人また一人と去っていった、こうして後には誰も残らなかった。
 このことは第三高等学校、今の京都大学での話である、だが。
 もう武道専門学校もなく森下も泉下の人になり彼の剣を見た人も殆どいなくなっている、だがそれでもだ。
 このことは僅かながらも今も伝えられてい
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