§35 白銀の軌跡と漆黒の螺旋
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
化物との誓約――彼の正体を黙秘すること――を破ってしまった結果招かれるであろう、絶望的な未来を想像して。
―――水羽黎斗はカンピオーネかい?―――
ドニのあの問いに動揺さえしなければ。僅かな動揺から彼の主は疑惑を確信に変えた。あの時は、ここまで一方的な展開になるとは予想していなかった。
「なんなのだ、あの方は……!!」
それだけならまだしも、彼の振るう剣の禍々しさは、アンドレアに本能的な恐怖を植え付ける。自らの主と戦う"アレ"は何だ? アレを親友の同朋と、思いたくなかった。
「ほらっ!!」
ドニが後ろに吹き飛ばされる。黎斗程度の腕力では呪術で強化していても、矮小なる英雄で強化していてもここまでの距離は吹き飛ばせなかっただろう。それならばこれはドニが、仕切り直したくて後ろへ下がったと見るべきか。
「くっ……」
この時、腹部の違和感に気付けていれば、展開は変わっていたかもしれない。鋼の身体に権能無しで傷をつけられた、という事に注視しすぎていたのは、間違いなく彼の敗因だった。斬撃だと思った感覚は斬撃に非ず。彼の肉体が熔けているという―――事実。
「これで終わりだよ」
大地に手の平を置く。マモンの権能で周囲一帯の大地を鉄に変化させたのだ。
「!?」
悪寒を感じて飛びずさろうとしたドニだが、それも残念ながら、叶うことは無い。雁字搦めに縛られたワイヤーが、ドニの動きを阻害する。
「無駄な事を。この程度のヒモで――!?」
重量に物を言わせて引きちぎろうと自身の重みを増やした事も、敗因だっただろう。言葉は最後まで続かない。爆音と共に周囲の水分が一斉に気化し、気体の体積が無慈悲なまでに膨張する。即ち、爆発を起こす。―――普通ならば。
「爆発されるとちょいと困るんだよねぇ」
嘯く黎斗は左手に持つ呪符を翳した。緑に淡く輝く札は、爆風の威力を抑え微弱な上昇気流へと軽減させる。一瞬白煙が周囲を覆ったが、上昇気流によりすぐにそれは空の彼方へ飛んでいく。
「数秒持てば十分だったんだわ、うん。……もう聞こえないか」
周囲の気配を探り無事、ドニがいないことを確認する。相手が魔王ならば油断が死と直結しかねない。
「よっ、と」
アンドレアまで被害が及ぶ前に彼を回収。安全な場所に放り投げる。それも落下した際に着地の衝撃を完全に殺すような力配分で。これで、決着だ。
「あ、一応始末しなきゃね」
液体と化していた大地をマモンの力で再び金属化する。渦を巻くように外周から固化、黎斗の足元に螺旋が収束していく。きゅ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ