§35 白銀の軌跡と漆黒の螺旋
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
小細工をしている間にここまで接近してきたか。こちらへ振るわれる刃を受け止めつつ黎斗は密かに嘆息する。想定よりも随分と速い。牽制で振るった一撃だが。
「無駄ぁ!!」
銀の軌跡を描く剣が、当然の如く大剣を切断する。まるで紙か何かのように。せっかく邪気化したのに無駄になってしまった。おまけに眼前を刃の切っ先が掠め。紙一重の回避。
「……こりゃ手こずる、かなぁ。様子見で倒れてくれるとベストなんだけどそれは無理くさいぞ」
大剣の強度は相当あった筈。まして邪気化による強化もしていたのにこのザマだ。当たったら拙いことがわかったので回避に重点を置いて行くとしよう。
「一刀流は慣れてないんだよなぁ」
二刀流より一刀流の方が強い。これは古来より言われることだ。剣を二本持つことと二本同時に振るうことは全く違う。二本で戦うということは一本だった時よりも当然自由度は上がるのだろう。だがそれは一本の剣を片手で十全に使うことが出来る、という前提のもとに成り立つ。
「――来い。重量刀」
武器は、重い。当然のことだ。大抵の武器は片手で振り回せるような生易しい代物ではない。「武器に振り回される」ことすらも片手で持っていては叶わないだろう。よしんば振り回せたとして、戦いが長引けば疲労によりそんな真似は次第に出来なくなる。だから二本使う場合は大抵、攻撃用の長剣と防御用の短剣の組み合わせとなる。短剣で受け止め、長剣で切り裂く。それが常識。だが。
「前と違って二刀流なんだね……ッ!!」
ドニが呻く。矮小なる英雄により、身体能力が激増している今の黎斗に、そのような人間の常識は通用しない。人間が使う程度の武器なら軽々と使いこなせる。十全どころか、十全以上に使いこなすことも不可能ではない。長剣の二刀流を真の意味で実現できる。攻撃にも防御にも変幻自在の軌道を魅せる、二本の剣は見る者に己が威容を鮮明に刻む。
「二刀流は僕の中で槍の次に得意な戦法よ。――僕から本気を、引き出してみせろ」
黎斗からドニに向けられた最大級の挑発。ドニが乗らないはずが、ない。
「……上等ぅ!!」
聖騎士ですら粉微塵になるであろう剣舞が二人の間で巻き起こる。
「これほどか……!?」
アンドレアの声が潮風漂う水面を走る。互角の戦いを演じることが出来たのは僅か数分の間だけ。有利に戦っているのは黎斗であり、ドニは思うように動けていない。黎斗が優勢であることが、素人目にもわかるほどだ。至高の武を体現する魔教教主とも剣なら互角に張り合えるドニが、押されている。剛を究めた一撃はいなされ、柔を極めた一撃は押しつぶされ。ドニの実力を知るが故に、眼
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ