第二章
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「蕎麦を打つのが上手で」
「技で打ってかい」
「あんたよりもかい」
「僕なんかもう」
ここでも大柄な身体に似合わない表現を使って客達に話す。
「足元にも及ばない位で」
「ううん、ちょっと信じられないな」
「あんたの蕎麦は確かに美味いからね」
「手打ちでもこれは凄いよ」
「かなりの味だよ」
「いえ、本当にです」
義国はまた客達に話した。
「お兄ちゃんの蕎麦は凄くて」
「そのお兄さんは何処にいるんだい?」
「大阪です」
そこだというのだ。
「大阪のキタです」
「ああ、あそこかい」
「そうなんです、僕はこの奈良にいますけれど」
奈良市だ、この店は奈良市の市街地にあるのだ。
「もう大阪のお兄ちゃんに買ったと思ったことはないです」
「一度もかい」
「そうなんだな」
「本当に凄くて」
またこう言うのだった。
「僕なんかじゃとても」
「そこまで凄いんならさ」
客の一人がここでこう義国に言った。
「一度お兄さんの店に行ってね」
「それで、ですね」
「ああ、どんな味が確かめてみたいな」
食べてだ、そうしたいというのだ。
「是非な」
「そうするといいですね。それじゃあ」
義国も客の話に乗った、それで笑顔でこう客達に言った。
「今度の休み、夜にでもお兄ちゃんのお店に行きますか」
「この店の定休日にだね」
「はい、そうしましょう」
こう客達に言うのだ。
「それでどうでしょうか」
「いいね、それじゃあね」
「今度の休みの時にね」
客達も彼の提案に笑顔で乗る。
「こっちも仕事何とか定時で終わらせて行くから」
「大阪のキタまでな」
「じゃあそういうことで」
義国は客達が自分の話に乗ってくれたのを見てすぐに応えた。
「宜しく御願いします」
「ああ、じゃあな」
「今度の休みの日にな」
こうして話はまとまった、義国と店の常連の客達は店の定休日の夜に大阪のキタに行くことにした、そしてだった。
大阪のキタのオフィス街、そこに入っていた。その中にだった。
然程大きくない如何にもといった感じの趣きのある木造の店があった、義国はその店の前で彼の店の客達に言った。
「ここです」
「ここか」
「ここが親父のお兄さんの店か」
「はい、そうです」
その通りだとだ、義国は客達に答えた。
「ここです」
「何か歴史がありそうだな」
「明治時代からですね」
「その頃からある店なんだな」
「はい、そうです」
その通りだとだ、彼は客達に答えた。
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