第一物語・後半-日来独立編-
第五十七章 解放《2》
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正確には始まりの後半気味なのだが、始まりをそう細かく分けなくてもいいだろう。
緑の芝生の絨毯の上に集まる数人。
そのなかで、不思議な雰囲気を放つ白銀の長髪の女性。
人のようだがそうではない。
日の光に照らされて、幾人かの者達を前に一つの古びた日記を開いていた。
日記の表紙には日記の題名らしきものが書かれているが、あまりにも古いもののため字がぼやけて読めなかった。
そんな日記を持つ銀髪の女性は過去の記憶を辿り、遠い日の情景を思い出す。
「私は幾つもの世界を見てきました。その度に多くの者が犠牲になり、同時に生き延びた多くの者が歴史をつくってきたのです。
この神葬世界と呼ばれる時代は、以後の私のあり方に大きな意味をもたらした時代でした」
「そうやって今に繋がるんですね」
茶髪の女子が言う。
はい、と銀髪の女性は一言。
にこりと笑う銀髪の女性は息を整え、日記に書かれた文字を見ながら再び話し始める。
「続きを話しましょう。まあ、まだこの時に私はいませんでしたが。私が関わるのはこの次ですので」
ページを捲り、口を動かした。
昔を思い出すように、懐かしき今は亡き仲間を想うように。この時代から全ては始まったのだと、そう思いながら。
野外で円になりながら、皆は話しの続きを聞いた。
今や伝説となった。遠い遠い、片腕無しの宿り主の物語を。
●
解放場のなかにいるセーランは瞳を短く閉じ、そして開いて語った。それがこれからのことに関わると知っていながらも、あえて話すことにした。
奏鳴に自分を知ってほしいためでも、ある。
自分のような存在がいることで、少しでも世界に変化をもたらせたらと、そう思う。
「俺の故郷は小さな村だったんだ」
「日来ではなかったのだな」
「ああ。七歳の時に故郷を失って日来に来たんだ。そん時は本当に、生きることについて考えてたもんだ」
はは、と短く笑う。
息を吸い、その後で口を動かす。
「俺の故郷は本当なんにも無くてさ。周りは山に囲まれて、遊ぶのもそこら辺でって感じでさ。なんにも無いところだったけど、楽しかったよ」
「そんな故郷を何故失うことになったのだ?」
「簡単なことだ」
村一つ失うのをためらわない。
考えれば誰もが分かる、とても簡単なこと。
この世界に生きる者達全員が関わっており、知っている存在。
彼らの言うことは、絶対だ。
それは、
「神のお告げってやつさ」
セーランの言葉に、この会話を聞いていた者達はざわめいた。
神のお告げ。
言い方は様々だが、それは神から人へのメッセージ。
未来を左右する、絶対なる宣告。
それは悲劇とも言えるものだが、神の発言のために悲劇と捉えてはいけない。当たり前のことだと、
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