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神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第五十七章 解放《2》
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整えて境内を見下ろす。
「あんた、股にリュウ挟んで何やってんの!? スカートじゃないから下から下着見えないじゃないの! 今日のあんたの下着の柄、水色と黄色の水玉模様ぐらい知ってるのよ!!」
「ぎゃあああ! 明、お前何処から見てたんだよ!」
「今、前後に動いたら股間擦ることになるから駄目よ! 幾らそれが快感だからって人は下品な女としか見てくれないわ!」
「い、いやあ、あのですね? 今の灯の方が下品な気が……」
 冷静に美兎はツッコみを入れる。
「人の問いにちゃんと答えろ――――!」
 騒いでいる彼方を見ながら、恋和と美琴は正面にある映画面も同時に見ていた。
 交互に見る形で、間に会話を混ぜながら。
 そんな笑みの美琴を見た恋和は言う。
「映画面に集中してませんけど、心配じゃないんですか」
 え? と言う言葉の後に、意味を理解した美琴は顔を横に振る。
「しんぱい、だよ? でもね、しんぱいしなく、ても……だいじょうぶだから」
「信じてるんですね」
「うん。だって、わかるから。だれかのために、なにかをやるセーラン、は、つよいから。じぶんがみんなに、せわになったから、たくさんのこと……するんだって」
「恩返しですか。本当に凄いですね、私達の長は」
「でもひとりでむちゃ、するから、きをつけてないとだけど」
 曇っている視界のなかで美琴は感じていた。
 セーランの声が微かに力強くなったの。
 青の空の下。解放されながらも、死に怯えずに宇天の長の向き合っている彼を想う。しかし、自分は彼の側には立てなかった。
 告白が失敗した時は傷付きはしたが、変な心配を掛けたくなくて平然と振る舞った。だけどやはり、悲しかった。
 人を好きになることが楽しいものと同時に、終われば空しいことを知った。
 自分はもう彼の側には立てない。
 だから宇天の長にはセーラン側に立ってほしいと思うが、これは身勝手な思いだろう。選択権は彼方にもあるのだから。
 これは他人が話しを割って入ることの出来無い、告白であっても異質な告白。
 死が迫り、皆が見守り、地域の未来を左右する告白。
 自分にはどうになるかなんて解らない。けれど、せめて一言。
「がんばれ」
 聞こえないが、セーランに向けて言った。
 返事は無い。が、行動で示してくれる筈だ。
 信じることだけが今出来ること。ならば信じよう。
 微弱な風が髪を揺らし、鳥居の方向、リュウに股がった飛豊が空へと飛んだ。
 竜の割には中等部学勢の身長とあまり変わらぬ全長に似合わず、かなりの速度で空へと上がり、斜めに降下した。
 空から飛豊の悲鳴が聞こえてくるが、ここは辛抱というものだ
 人々が騒がしくとも青の空は、変わらずに穏やかなままだった。



 それが、この物語の始まりの出来事だった
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