第一物語・後半-日来独立編-
第五十七章 解放《2》
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らねえ、死んだら駄目だ」
「お前の考えを私に押し付けるな」
「強引にでも救い出す。これは決定事項だ。
俺達は何処かで何かを間違えたんだ。だからお互いひねくれててさ、変なとこで筋金入りなんだ」
セーランは手を握り締めたまま、
「どうせだ。少し、昔の話しをしようか」
「昔の話し?」
「俺が小さかった頃の話しさ」
言葉を結界の外側に何時の間にか表示されていた映画面|《モニター》越しに、幾つもの特別な段階を踏んで皆は聴いた。
貿易区域内に取り付けられた、また他の場所の監視用映画面からセーランの声は響いた。
誰もがその声を聴いた。
今、この世で最も宇天の長の近くにいる者の声を。されど、その行為に至った日来の長の心中は、少人数の者しか理解してはいなかった。
●
長莵神社にて、賽銭箱の横に横一列に並んでいる女子五名。
五人の前には一つの映画面|《モニター》が表示されており、映っているのは解放場の内側にいるセーランと宇天の長だ。
日来の周りはまだ戦闘艦がいるが、防御壁により砲撃は届いておらず、前に負った砲撃の処置も機械部の者達の手によって済んでいる。
事態は日来有利と思えるが、まだ明確には分かってはいない。
そんな不安のなかで五人いる女子の内、五人のなかでも最も髪の長い灯が呟いた。
「向き合おうとしているのね」
「向き合う、ですか?」
体育座りをしている美兎が問い返した。
問い返す相手である灯は、ふふ、となんの意味が隠ってか短く笑う。
「セーランが自分自身の過去に。それに」
「宇天長、にも……だよ、ね?」
「正解。さすがは美琴ね」
灯は隣に座っている美琴の頭を数回、優しい手付きで撫でた。見ていた美兎はそれを不思議に思っていた。
普通ならばがっつく筈なのだが。いや、解っている。
きっと不安なんですよね。
どう転ぶか分からない、まさに命を掛けた会話。上手く行くのか、それとも――。
ふざけている場合ではないのだと、灯は判断したのだ。
感じ取ったからこそ、美兎も他の三人もふざけなかった。
「そう言えばセーランが日来に来たのって何時の時だったかしら?」
今度は灯が美兎へと問うた。
この機会に、改めて過去を知ろうとしているのだろうか。
「七歳ぐらいだと記憶していますね。ですが話すとしたら……」
「故郷のことを話すだろうな」
これまで話しを聞いていた飛豊が会話に割って入り、飛豊の言葉に美兎は頷く。
「そうでしょうね。後、自分自身のことについても」
「セーラン、だいじょうぶか、な」
「心配いりません。もうセーラン君は落ちませんよ、落ちる程、もう柔ではありませんから」
微笑む美兎。
そこへ会話に入ろうにも入れなかった恋和が、会話の流れを読んで入ってきた。
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