マザーズ・ロザリオ編
挿話集
ダンジョン・デートA
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ってくれるものだが、残念ながらその類いのNPCは結婚システムの無いアルヴヘイムには存在しない。
数分間の思考の末、この相手に自分で尋ねる形式を採ったのだが……ヘンテコこの上無い。
「はい、誓います」
お互い、武器こそ外しているものの防具は付けたままだ。
―――いつか……全てが片付いたら、この子に本物のドレスを送ってやろう。
そんなことを思いながら俺は言葉を返す。
「紺野木綿季、汝は、俺を夫とし。
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も。
共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かとうとも、その魂が尽きる時まで。
愛を誓い、夫を想い、夫のみに添う事を。誓いますか?」
「……はい、誓います」
指環は偶々2つ持っていたレアアイテムのもので代用。お互いの左薬指に嵌め合って指環交換終了。
そして次が……
「「………………」」
『最後に、夫婦として初めての口付けを』→退場。
で大体は終了のはずだ。賛美歌とかは知らないから省略。
(やれやれ……)
「……木綿季」
「は、はい!?」
何故に敬語か。もう何回目だよ……
ユウキの小さな肩に手を置いて顔を近づける。
視線が交わり、自然と目を瞑って―――その柔らかい花弁に触れた。
俺は知っている。
この幸せが泡のように脆い物だと言うことを。
儚い夢、刹那の喜び。
どの道避けられない悲劇が待ち受けているならば―――この瞬間を永遠のものにしてしまえばいい。
記憶に、魂に。深く、深く刻み付ける。
俺は永遠にこの瞬間を忘れない。
易々と死ぬつもりもない。
―――Until death do us part.
そう、俺は誓ったのだから……
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