マザーズ・ロザリオ編
挿話集
ダンジョン・デートA
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たらかなり面倒だが幸いそんな事は無く、重厚そうな鉄門が目の前に現れた。
「……さて、これで最後だが。無理するなよ?2人しか居ないから、どっちかが倒れたらオシマイだ」
「はーい!」
……何時もの事だが、分かってるのか?本当に。
で、だ。
「離そうか、手」
「……むー」
「むー、じゃない。行くの?行かないの?」
「…………」
惜しむように手を離すユウキ。その様子はまるで他所に引き取られて行く犬のようだった。
(……しょうがない奴だな)
ずーん、と肩を落としているようにも見えるユウキの前に回り込むとその小さな頭を両手で固定し、顔を近付けていく。
「え…………う!?」
口を付けたのはその可憐な唇ではなく、額。そのまま耳許に顔をもっていき、小さく囁く。
一瞬、期待が外れたユウキはますます落ち込んだが、その直後、顔に最大級の羞恥を浮かべるとすっかり元の天真爛漫なユウキに戻った。
「……そうゆう訳でとっとと終わらせようぜ」
「うん!」
囁いたのはダンジョンに入る前にハンニャから仕入れた『ある情報』。それはユウキの機嫌を直すには結構効いたようだった。
なお、既にその情報を知っている(つまり、『ここ』に到達している)ハンニャに恐ろしさを感じたのは別の話。
どこか教会然としたボスの部屋に入ると俺は不思議な既視感を感じた。
カトリック様式とプロテスタント様式を併せ持つ中道的な様式はゲーム内という事もあって巧妙に隠されていたが、滲み出る雰囲気は俺の記憶野を盛んに刺激した。
かつて親父と訪れた『イングランド国教会』、別名アングリカン・チャーチ。政治的なしがらみによってカトリックやプロテスタントに揺られ、エリザベスT世の中道政策によって一応の安泰。中道故に両宗派からの批判は免れず、結局17世紀のピューリタン革命の引き金の1つとなった教会―――の雰囲気にどこか似ているのだ、ここは。
そんな郷愁も目の前に座する四つ足の巨龍を見て霧散した。
「グルルルルル…………」
《Massacre emperor》――虐殺皇帝
(……定冠詞が無い?まさか……いや、違うか)
ダンジョン最上階に居るからにはこの塔のラスボスはコイツで間違いない。カーソルにもメインターゲットを示す王冠のマークが付いている。
コイツを倒すと真・ボスが出てくるなんて事は無いはずだ。少し気になる部分はあるが、今考える事ではない。
「行くぞ。序盤は様子見、今までで掴んだ事を忘れるなよ」
「うん!」
激怒の咆哮と共に吐かれた漆黒の炎と焔盾の紅蓮の焔が衝突する。
炎の奔流は盾を突き破ろうとする
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