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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十九話「姦しい二人」
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りません。大変心地よいです」


「そうか? ならいいが」


「よくないわよ!」


 ダンッ、とテーブルを強く叩いたクレアが睨みつけてきた。


「アンタ、前々から思ってたけど……ちょっとその剣精霊に甘いんじゃないの?」


「ん? いや、そんなことないと思うが。ところで、結局勝負とやらはどうなったんだ?」


「……まあいいわ。勝負は――」


「料理対決よ」


 クレアの言葉に被せる形でフィアが言う。


 ぴくぴくと眉が怪しげに跳ねるクレア。その心中はさぞ荒れ狂っているのだろう。


「料理?」


「ええ。精霊を楽しませる御膳を奉納するのは〈神楽〉と同じ必須スキル。それに乙女としてもね。巷ではそういう女らしさを女子力というみたい」


「女子力か。なんとも言い得て妙だな」


 随分と簡潔にして的を得ている言葉だ。


「それで、今回は料理を一品ずつ作って、どちらの料理が上か競うの。リシャルト君は審査役としてお願いね」


「それはいいが、俺を好きにできるというのは流石に看過できんぞ? まあ、一日付き合う程度なら構わんが」


「十分よ。ありがとう、リシャルト君」


「――どういたしまして」


 いかん、顔が赤くなる。


 少し見ない間に色々と成長したフィアはまさに美少女という言葉が相応しい。そんな彼女に微笑まれたら否応にも反応してしまう。


 ぽりぽりと頬をかいていると、裾を小さく引っ張られた。


「リシャルト、勝負とはなんのことですか?」


「ん? ああ、なんでもこのお嬢さん方が料理対決をするんだと。勝ったら俺と一日付き合う権利がもらえるらしい。……今思ったんだが、これって誰得って話だよな」


「そうですか……。そういうことでしたらエストも立候補します」


「エスト?」


「そうしたら、リシャルトはエストと一緒ですよね?」


 そもそも、ずっと一緒でしたよね?


 何やら怪しい雲行きになってきた。


 クレアたちはエストが参戦しても構わないとのこと。どうやら精霊であるエストに料理で負けるとは微塵も思っていないらしい。


 ――どうやら、うちの契約精霊が料理を作るようです。


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