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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十九話「姦しい二人」
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「そんなマニアックな関係だったなんて……!」


「ふ、ふん! そんなアンタこそリシャルトとどんな関係なのよ。編入生のくれに随分と親しげじゃない」


 今度はクレアが問う。


 大きく呼吸を繰り返して落ち着きを取り戻したフィアはコホンと咳払いすると。


「私? 私はリシャルト君の……婚約者よ」


「こ、こここ婚約者!?」


「おいちょっと待て」


 なにとち狂ったことを抜かしてるんだこの娘は。


 なに考えてるんだと、ジトーっと半眼で見つめていると、フィアの頬が徐々に赤らんでいった。


「こ、婚約者って……ああああんた、ほ、本当に? ちょっと、どうなのよねえ!」


「落ち着け。フィアの冗談だ」


「あら、冗談だなんて酷いわね。あの時の逢瀬は今も忘れてないわよ?」


「おおおお逢瀬!?」


「なにを言い出すんだ君は……」


 ああ、なんかドッと疲れてきた。俺もエストと混ざってスカーレットと戯れようかな……。


 楽しそうにじゃれ合ってる精霊たちのいる場所が癒しの空間に見えた。


「り、リシャルトはあたしのなんだから!」


 席を立ったクレアが唐突に抱きついてきた。フシャーッとフィアを威する姿はまさに猫そのものだ。


「あたしなんか……リシャルトと、キ、キス……したし」


「……」


 フィアはぽかん、と口を開けた。


 ギギギ……、と油を指していない人形のようなぎこちなさでこちらに顔を向ける。


「ねえ、それは、本当なの? リシャルト君」


「いや、まあ……はい」


 正直不可抗力だったが、Yes or Noで問われたら前者なのも事実。


 観念して正直に頷くと、フィアはにっこりと微笑んだ。


「そう。ふーん……キス、したんだ」


 まただ。その微笑みから底知れない何かを感じる。


 この威圧感にも似た圧迫は前世の師匠と対峙したそれと同格だ。


(す、少し見ないうちに強くなったな……色々と)


 戦々恐々しているとフィアナはスッと立ち上がり、その白魚のような綺麗な指をクレアに突き付けた。


「――勝負よ、クレア・ルージュ!」


「勝負?」


「ええ、リシャルト君を賭けた勝負。勝った方がリシャルト君を好きにできる権利を獲得できる」


「なっ! い、いやよ! リシャルトはあたしのだもん!」


「あら、そう思ってるのは貴女だけでしょ。第一、リシャルト君を物扱いだなんて彼が可哀想だわ」


 そう思うのなら勝手に人を景品にしないでくれ。


「貴女が勝ったら大人しくこの部屋から出て
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