第十九話「姦しい二人」
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たい、なんであたしの部屋なのよ!」
「二人部屋を一人で使ってるのは君くらいだろう。当然な沙汰だと思うが?」
「一人じゃないわよ。スカーレットもいるんだから!」
「普通、契約精霊は同居人としてカウントされないぞ」
「うっ……。で、でも急すぎるわよ! いくらなんでも」
「それは同情できるが、すべては婆さんが決めたことだからな。人間、諦めが肝心ともいうし。まあ、Don’t mindだ」
そういって肩をすくめる俺にクレアが恨めまがしい視線を送ってきた。
「まあしかし、これでようやく俺もお役御免だな。これからはフィアに食事を作ってもらいな。いや、これを機に教えてもらえ」
いつまでもクレアの世話を焼くことはできないし、ここは一つフィアにも協力してもらうとしよう。
「フィア、すまんがクレアに料理を教えてあげてくれないか? 今までは俺が作りに来ていたが流石にそうもいかんだろうしな」
フィアは第二王女という身分に関わらず身の回りのことはすべて自分で済ませる。料理や掃除といった家事も卒となく熟せる。なんでも『女の嗜み』だそうだ。
彼女の腕前を知る俺としては安心してクレアを任せられる。
「……今までは俺は作ってた? リシャルト君……もしかして、これまでずっとクレア・ルージュのご飯を?」
綺麗な笑みを浮かべながらそんなことを聞いてくるフィア。なぜだか、その微笑みから底知れない何かを感じるのだが……気のせいか?
「ああ、なにしろ本人はからっきしだからな」
「……そう」
笑みが深まる。同時に感じていた底知れぬ何かも強まった気がした。
「イヤよ。これからもリシャルトが作って頂戴!」
「随分と図々しいことを胸張って言ったな君は」
なんともクレアらしい言葉だが、呆れてものも言えないぞ。
「だって、リシャルトの作るご飯、おいしいんだもん……」
ピキッ……!
フィアの表情が若干強張った。こめかみに青筋が浮かんだ――気がした。
「……ねぇ、クレア・ルージュ? 貴女とリシャルト君ってどういう関係なのかしら」
「ど、どういう関係って、それは……」
顔を赤らめてもじもじと指を捏ねくり合せる。
「こいつとは、その……ど、奴隷と主人の関係よ!」
「おいちょっと待て」
いきなり何を言い出すんだこの娘は。流石にその発言は聞き逃せないぞ。
というか、いくらなんでもソレは相手も真に受けないだろう――。
「な、なんですって!」
驚愕の表情でフィアが俺とクレアの顔を見比べていた。
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