第五話 誓い
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
イスが話をしているとノルデンが落ち着きを欠いた声で割り込んできた。
「司令官閣下、もはや大勢は決したように思われます。損害を被らぬうちに退却なさるべきでしょう」
馬鹿か! お前は! 今まで何を聞いていた。大体無傷の予備が一万五千隻も有るのだ、その意味が分かっていないのか?
「敵の攻勢は終末点に近付いている。無限の運動など有り得ぬ。終末点に達したその瞬間に敵中枢に火力を集中すれば一撃で潰え去る。何故逃げねばならぬ」
「それは机上の御思案、そのような物に囚われずに後退なさい」
「黙れ! 臆病者が! 味方の敗北を口にするすら許し難くあるのに司令官の指揮権にまで口をはさむか!」
俺がノルデンを怒鳴り付けるとキルヒアイスが“反乱軍の動きが止まりました”と声を上げた。準備は出来ているというようにキルヒアイスが俺に頷く。
「全艦に命令、主砲斉射三連! 撃て!」
俺が命じた時、爺さんの艦隊が主砲斉射を行うのが見えた。また先を越された! この馬鹿参謀長の所為だ、やはり味方が必要だ、俺を助けてくれる有能な味方が……。呆けたように戦場を見ているノルデンを睨み据えながら思った……。
■ 帝国暦486年 3月 18日 オーディン ジークフリード・キルヒアイス
第三次ティアマト会戦の功績によりラインハルト様は大将に昇進した。そして驚いたことにリュッケルト中将も大将に昇進した。オーディンでは皆が驚いている。兵卒上がりの将官が大将に昇進するのは初めての事だ。もっとも武勲はそれに相応しいものだ、第三次ティアマト会戦はリュッケルト大将とラインハルト様の主砲斉射で勝つ事が出来たのだから。
“軍上層部もようやく爺さんの実力に気付いたらしい”、ラインハルト様はリュッケルト大将の昇進を自分が昇進した事以上に喜んだ。リュッケルト大将に直接御祝いの言葉を言いたいと大将の自宅を訪ねたのだが……。
「驚いたか?」
「ああ、ちょっと」
ラインハルト様の答えに同感だ、私も驚いた。応接室に通されたが未だに驚きが醒めない。娘のような奥さんと孫のような娘さんが迎えてくれたのだ。
「女房とは十年前に出会って結婚した。俺が五十で相手は二十六の時だ。俺は初婚だが女房は一度結婚していてな、戦争未亡人だった」
「そうか」
「娘は未だ八歳だ。おかげで俺の家は親子というより爺と娘と孫の三世代家族みたいになっちまってる」
「なるほど」
リュッケルト大将が”困ったもんだよな”と言って片目を瞑った。
「だから後方に移りたいと?」
「まあそんなところだ、あいつらを置いて死にたくないと思ったのさ」
「でも今回の昇進を見れば上層部は爺さんの実力を認めたんじゃないかな」
ラインハルト様の言葉にリュッケルト大将が“フム”と声を出した。
「そうじ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ